第3話
いつも同じ安ホテルだ。
変化があるとしたら部屋が変わるくらいだった。ひょっとしたら全部屋に入ったかもしれない。ここも、3回くらい前に使った部屋だ。ベッド横のサイドテーブルが欠けてたから、覚えてる。
何か買ってくればよかったね、とあなたは言ったけど、鞄からゴムを取り出した。それを買ったときに買えばよかったのにって、あたしは思った。
あなたは少しだけ部屋の照明を落とした。
いつも、電気は消さない。
あたしの顔をみていたいからだと、あなたは言った。
先にシャワーを浴びる。長い髪をまとめるためのヘアクリップは、いつしか鞄に常備するようになっていた。ストッキングを脱いだ。踵が少し擦れていたからシャワーが少ししみた。
入念に体を洗って戻ると、あなたは携帯電話を眺めていた。ビールの缶が開いてる。一瞬だけ、バスローブにくるまったあたしを見ると、何か操作をしてから立ち上がる。あたしをハグしておでこにキスをした。あなたはなにも言わず、そのままシャワールームに消えた。
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