第2話

僕も、他人との会話は苦手で、出来る事なら関わりあいたくない。

どちらかと言うと、彼女・・・万田さんと同じように、1人で過ごすことが多い。


「稲田くんも、その本好きなんだ」

一度だけ、会話をしたことを思い出す。

「・・・万田さんだっけ?そうだよ・・・」

「面白いね、その本」

「うん」


実はよく知らない。

たまたま見かけて面白そうだった。


エラリー・クィーンだったと思うが・・・

忘れてしまった。


「いつか、ふたりで推理小説書こうね、エラリークィーンみたいに」

「彼らは、いとこだけどね」

「気にしない、気にしない」


意外にも、その時はフランクなしゃべり方だった。

だが、次の休み時間には、いつもの万田さんに戻っていた。


あれは何だったのだろう?


万田さんと話したのは、それが最初で最後だった。

その数か月後に、彼女は旅立つ。

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