第2話 重複をなくす
前回、基本1、2、3で、
1、誤字脱字を訂正(誤変換含む)
2、変な言いまわしをなくす
3、言葉の重複を減らす
というのをあげてました。
でも、書きあげてから、しまったなと思ったんです。3を重複にするより、『てにをは』にしたほうが、わかりやすかったですね。
てことで、
3、てにをはを直す。
文章を読んでみて、誤字もないのに意味がすんなり伝わってこないときは、『てにをは』が間違ってることがあります。てにをはを正しく修正するだけで、めっちゃ読みやすくなるので、推敲時、ちょっと意識してみるといいです。
とくに、やりがちなのは、〇〇に〇〇に〇〇、〇〇の〇〇の〇〇、などのように、同じ助詞を多用しちゃう。言葉の重複にも通じるんですが、これはさけたほうがいいです。読みにくいし、へたくそに見えるから。
まあ、これもいずれ、自作でダメな例文見つけてきます。じっさいに修正前、修正後を見たほうが一目瞭然ですし。
なので、今回は基本4ですね。4は今度こそ、重複をなくす、です。
いきなり、例文いきますか。
例文1(修正前)
ハシェドはめまいを感じ、目をきつく閉ざす。目をあけてみたら、そこにはいつもどおりのワレスが立っている——そう信じて。
しかし、もう一度、目をあけても、そこにあったのは、やはり同じもの。
ダメだなぁ。この短い文章のなかに『目をあけたら』が二回入ってるし、『めまい』もよせたら、『目』が四回も使われてる。めまいも漢字で書けば『眩暈』または『目眩』ですからね。駄文も駄文。
で、これを直す。
例文1(修正後)
ハシェドはめまいを感じた。いったん、まぶたをきつく閉ざす。目をあけてみたら、そこにはいつもどおりのワレスが立っている——そう信じて。
しかし、もう一度、見ても、そこにあったのは、やはり同じもの。
目を閉ざす→まぶたを閉ざす
もういちど、目をあけても→もう一度、見ても
二カ所の『目』をなくしました。まるかぶりの『目をあけたら』が一度に。ずいぶん、スッキリした感じしませんか?
これをさらに修正するなら、めまいをなくすために、最初の一文を『ハシェドはよろめいた。』『ハシェドは深く困惑した。』『ハシェドはこめかみを押さえた。』などに変えれば、『目』が一個になります。
今回は、まあいいかと思って(←いいかげん。こういう性格)めまいのまま残してます。
いや、自分はしっかり直したい、という人は、表現方法を似た言葉で変えるように心がけましょう。
けっきょく、重複をさけるには、表現のバリエーションを増やすわけです。類語を使う、類語ではないまでも、意味的には近い表現にする。そういうことです。
ハシェドはめまいを感じた。
ハシェドはよろめいた。
めまいを感じるからよろめくわけで、読者に与える印象は大差ないでしょう。
重複には、こんなのもあります。
例文2(修正前)
ワレスが耳元でささやく言葉をオウム返しにくりかえすだけだが、エルマはなかなかうまくやってくれる。声をつぶしているので、少しハスキーだが、それもケガのせいとミモザは思ってくれたようだ。
——中略——
蒼白でワレスを(じっさいにはエルマだが)見つめ、声も出ない。
例文2(修正後)
ワレスが耳元でささやく言葉をオウム返しにくりかえすだけだが、エルマはなかなかうまくやってくれる。声をつぶしているので、少しハスキーではあるものの、それもケガのせいとミモザは思ってくれたようだ。
——中略——
蒼白でワレス(じっさいにはエルマ)を見つめ、声も出ない。
どこを直したかわかりますか? そうです。二回めの『だが』を『ではあるものの』にしました。『だが』二連続だと、リズムが重なって、なんか変な感じがしたんですよ。
そのあと、一文置いて(中略部分)さらに『だが』があったので、ここも『を』の位置を移動させることで、省略に成功。近いところで、『だが』三連発でした。
重複ではないですが、間違った言いまわしで、よく『オウム返した』と、オウム返しを動詞のように使う人いますけど、それは誤用です。正しくは『オウム返しにした』です。
マンガなどで、コメディタッチにするため、わざと間違った用法を使うのはアリですが、小説ではしないほうがいいでしょう。とくに公募用なら。ギャグタッチなラノベはゆるされるのかもですけどね。文芸寄りを意識してる人はやめたほうが無難です。
例文3(修正前)
おまえの年ではありえない。でも、世間はそうは見てくれなかった。レックスヒルの悪魔は当時、レシアン州では、すごい有名人だったようだな。
例文3(修正後)
おまえの年ではありえない。でも、世間はそう見てくれなかった。レックスヒルの悪魔は当時、レシアン州で、すごい有名人だったようだな。
これ、どこ違うかわかりますかね? 重複だけじゃなく、前述の『てにをは』の例文にもなりましたね。わかりやすいように、ぬいた文字に傍点入れときます。
例文3(修正前傍点入り)
おまえの年ではありえない。でも、世間はそうは見てくれなかった。レックスヒルの悪魔は当時、レシアン州では、すごい有名人だったようだな。
おまえの年『では』と、レシアン州『では』の二カ所、『では』が重複。しかも、世間『は』そう『は』と、ここでも助詞が二連続。
なので、二カ所の『は』をぬいただけ。手直しそれだけなんですが、くらべると修正後のほうが絶対いいですよね? いいですよね? ……いいですよね?
例文4(修正前)
リヒテルは勘違いして、おまえが蛇が怖いんだと思っているんだ。
例文4(修正後)
リヒテルは勘違いしてる。おまえは蛇が怖いんだと思っているんだ。
これも『てにをは』の例文ですね。『が』が二回重なって読みにくい。片方を『は』にするだけで違う。
でも、そうすると、リヒテルはと、おまえはの『は』が重複しちゃう。思いきって、二つの文に区切りました。これで、どこも重ならない。
または、『おまえの怖いものが蛇だと思っているんだ』なんて直しかたもあります。
例文5(修正前)
「そうでもないぞ。金持ちは金に汚いからな。金のために殺しあう。そういう連中を、おれは何度も見てきた」
例文5(修正後)
「そうでもないぞ。富豪ほど金に汚いからな。財産のために殺しあう。そういう連中を、おれは何度も見てきた」
こちらは単純に『金』が三連続になってしまってた。修正前のほうが下町育ちの感じはするんですが、二カ所を富豪、財産に置きかえることで、金三連発を回避。くわえて、『金持ちは』を『富豪ほど』にして、金持ちを富豪に変えたことでのインパクトの弱さを補強しました。
現実で友達と会話するなら、修正前のほうが自然なんですけどね。小説としての出来と現実での話し言葉は違うので。修正後のほうが、文章としてはうまく感じませんか?
例文6(修正前)
私だって花は好きですが、マグノリアたちのように花を人間として見ているわけではありませんから。
例文6(修正後)
私だって花は好きですが、マグノリアたちのように人間と同等に見ているわけではありませんから。
これも一文のなかに花が二回も。
修正案に、『私だって花は好きです。が、マグノリアたちのように花を人間として見ているわけではありませんから。』と、文章を二つにわけてしまう方法もあるんですが、この直前の文末も『です』で終わってたんですよ。すると、『です』で終わる文章が二連続になっちゃうので、上記の形で修正しました。二文になっても近いとこで花が二回って欠点はそのまま残ってしまうし。
例文7(修正前)
これを聞いて、ショーンが嘘をついていないと、ワレスは確信した。ショーンは商売の才能を持っているが、横領してまで利潤を追求するタイプではない。
例文7(修正後)
嘘ではないと、ワレスは確信した。ショーンは商売の才能を持っているが、横領してまで利潤を追求するタイプではない。
重複のなかでやっかいなのが、コレ。人名を連呼してしまう。ここでは上記のように、ショーンを一回省略しました。修正するほどでもない部分だったんですが、ちょうどいい例文が見つからなかったので、ややムリクリ直してみました。
これは脇役でしたが、一文のなかで、主役の名前が二、三回入ってる文章、たまにありますよね。
とくに、一人称の場合、『僕は思った』『僕は走りだした』『僕がそうしたいと考えたんだから、僕の自由だと、僕は宣言した』みたいな僕僕(オレオレ、あたしあたし)、見たことありませんか?
こういうのも重複文になります。僕僕や人名以外でも、主語を一文に二回以上入れるのはさけたほうがよいでしょう。
ちなみに、前述の僕僕。
例文8(修正前)
僕がそうしたいと考えたんだから、僕の自由だと、僕は宣言した。
これを修正するなら、こんな感じ。
例文8(修正後)
そうしたいと考えたのは僕だ。個人の自由だと宣言したっていいだろ?
ごらんのように、僕を二回なくしたら、こんなにスッキリ。読んだとき、すっと意味が入ってきませんか? 一人称らしい自然さとカッコよさもあるし。
重複はこんなもので充分でしょうか?
修正には、省略と類語(に近い)変換、文章分割などが有効です。
よく「自分のボキャブラリー貧困すぎる。直しかたわからない」のように近況ノート書いてる人、見かけますが、ここまで読んできて、「あれ? 意外と難しい単語なんか出てこなかったぞ」って思いませんでしたか?
ムリして難解な文章こねくりまわす必要はないんです。知ってる単語の語順を変えたり、ちょっと言いかえるだけで、重複をさけることができます。
推敲のとき、少しだけ意識してみてください。
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