第2話『リルカの戦い』
――リルカ・トアステン視点
「一つ聞きたい。私たちが人間ではない事。それをどうやって知った?」
帝国三騎士の一人であるギルベルト。
奴は私との一騎打ちを始める前にそんな質問を投げかけてきた。
「なによそれ。答える必要ある?」
「いいや? ただ興味があるだけさ。別に答えたくなければ答えなくてもいい。もっとも、時間稼ぎが目的ならばあの手この手で時間を引き延ばすべきだとは思うがね」
「ちっ――」
ばれてるみたい。
いや、それも当然か。
ティナのおかげで私は強くなれた。
今までの私の魔術。
あれがとても雑で、どれだけ無駄の多い魔術だったのかという事が今なら分かる。
それが分かるくらい私は成長したというのに。
この男――ギルベルトの動きには付いていくのがやっとという所だった。
その私と比べて、ティナはともかくビャクヤの身体能力は致命的なまでに低い。
あの時、あの場でこのギルベルトを暴れさせていたら気づかない内にビャクヤが脱落……なんて事にもなりかねなかった。
だからこそ。
こいつのスピードに唯一ついていける私がこいつの足を止めなきゃいけない。
その間にビャクヤとティナがレゾニアを倒してくれれば良し。
そんな思惑もあってこいつをビャクヤ達から引き離したんだけど……少し
「
「そうだな。それが?」
本当にそれがどうした? って感じで首をかしげるギルベルト。
不思議だ。
こいつ、私の時間稼ぎという狙いに気付いてるはずなのに。
それなのに、急ぐそぶりすらない。
「今、向こうのレゾニアは数の上で不利な状態よ。それなのに私の時間稼ぎって思惑に気付きながらもそれに付き合ってもいい? 気味が悪いわ。一体、何を考えてるのよ?」
そんな私の問いにギルベルトは「うん?」と不思議そうな表情を浮かべ。
「ああ、そう言う事か」
何を納得したのかは分からないが、そう呟いた。
「別に。何も企んでなどいないさ。言っただろう? 興味があるだけだと。それに、君は一つ勘違いをしている」
「勘違い?」
「ああ。君はこう考えているのではないか? 私とレゾニアは同じ陣営に属する仲間。だからこそ私は手早く君を倒し、レゾニアと合流したいはずだと」
「……何よ。違うっての?」
「ああ、違う。見当違いだ。私はね。あの二人がレゾニアを倒すなら倒すでそれでいいと思っているのだよ」
……はぁ?
こいつ、一体何を言ってるの?
仲間が倒されてもいい?
気でも狂ってんのかしら?
「――エクス卿は強者を求めていらっしゃる」
「強者?」
エクス卿。
まだ見ぬ帝国三騎士の一人。
こいつらの……指揮官的存在。
それが強者を求めているって。
どういう事?
「エクス卿は私やレゾニアなど相手にならないほどの実力の持ち主でな。つまるところ、対等に戦える相手が居ない。だからこその――争いだ」
「何を言ってるの?」
「分からないかね、人間? 君らは逆境に追い込まれれば追い込まれるほど実力を発揮する可能性の塊だ。そんな人間をこそエクス卿は愛し、自分と戦えるほどに成長して欲しいと願っている。だからこそ我々は争いの種をまく。まき続けるのだ」
分からない。
本格的に、こいつが何を言っているのか分からない。
「ゆえに、あの二人がレゾニアを打ち倒す。そのような展開となればエクス卿もさぞ喜ばれる事だろう」
そう笑いながら告げるギルベルト。
ああ、そうか。
こいつら魔人にとって。
いや、まだ見ぬエクス卿という魔人にとって。
「さて、話を戻そう。こちらも色々と教えたのだ。ゆえに、聞かせてくれないかな? 私たちが人間でない事。それはどうやって知った?」
再度尋ねてくるギルベルト。
知られたところで不都合なんてほとんどない。
時間稼ぎが目的なら素直に答えてもいいし、なんなら嘘を吐いてもいい。
だけど、私は――
「ハッ。教える訳ないでしょ。もやもやしたまま、ここで朽ちていきなさいよ、魔人っ!!」
ズビシっと中指を立てて。
私は魔人ギルベルトにそう言ってやった。
「くく。それは残念。しかしいいぞ。余計に興味をそそられる。決めた。君をどこまでも屈服させ、その上で無理やり聞かせてもらうとしよう」
そうして。
私とギルベルトの戦いは始まった――
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