第14話『成果』



 ティナから渡された薬を飲んだリルだが、無事に昔の洗練された魔術知識とやらを得ることが出来たようだった。


 リル曰く「新しい知識を得たっていうか。なんだか元々知ってるみたいに感じるわね。ホント、古代の技術って凄いわ」と感心していた。



 その後。

 ティナは知識のみ身に着けたリルを短時間で徹底的にしごいて。

 特訓の中の空いた休憩時間で古代人の知見から俺達にとって有益ゆうえきそうな話を色々としてくれた。



 まず、この世界にあふれている魔物。

 これらは全て古代人。つまりはティナのマスターみたいな人間達が自分達の身を守る為に生み出した存在なのだとか。


 昔、魔物は守護者と呼ばれていた。

 魔物は古代人の命令には忠実に従い、古代人が隠れ潜んでいたダンジョンの守護などを担当していたらしい。


 また、古代人は魔物をいくらでも増やせたようで。

 クリスタルが地中から吸い上げる魔力を利用して、魔物が無限に増え続けるシステムを構築していたらしい。


 現在、世界に魔物が溢れているのはこのシステムがまだ色んなダンジョンで稼働したまま放置されているからだろうとの事だった。



 ――なんてはた迷惑な!!


 魔人に対抗する為の戦力が欲しくて、それでそんなシステムを構築したとかティナは言うけど、その魔物をコントロールできない現代人からしたら迷惑でしかない。



 そんでもって魔物をコントロールするには専用の装置が必要らしく。

 その装置の一つがクロウシェット国で第一王女キャロルカが持ってたアレ(銀色のカード)なのだとか。


 量産化されている代物らしく、ロウクダンジョンたるこの施設にも一枚だけ置いてあった。


 この魔物をコントロールする装置。

 これ、純然じゅんぜんたる人間のみ使用できるようになっているらしい。

 なのでティナはこの装置の扱い方こそ知っているものの、使う権限は自分にはないとの事だった。


 なので、ティナのご主人様として今も認識されている俺が預かっている。



 ティナが言うにはこの装置で魔物をコントロールする為には色々とコツがあるみたいで。


 しかし、難しそうだったので俺はそんなティナの説明を聞き流しました!


 こんなの持ってても俺には使いこなせそうにないしな。

 後でクランク兄さんにでもあげよう。


 ティナにはその時の為に装置の説明書を作ってもらったし。

 その説明書ごとクランク兄さんに押し付ければいいや。



 ――次に。

 各地に存在しているダンジョン。

 その全てはおそらく古代人の施設で、最下層には古代人が残した何かしらの研究成果が眠っているだろうという事だった。


 言われてみれば俺とリルが過去に攻略したダンジョン。

 クリスタルの部屋。なんか奥に続く通路があったな。

 あの奥に今居るような機械に包まれた近代チックな部屋があったのかもしれない。


 ちなみにロウクダンジョンの最下層にあったこの施設。

 三人がかりで調べた感じだと、ここでは人間の能力を底上げさせようという研究をしていたらしい。


 素養のある人間を薬漬けにしてドーピングし、魔人と張り合えるくらい強化する。


 また、劣悪な環境でも生きられるように素養のある人間を改造したりする。


 そんな研究をここでは行っていたらしい。

 もっとも、資料を見た感じ、この研究は欠陥だらけにしか見えなかった。


 というのも、普通の人間は薬漬けにされたり改造されたりの負荷に耐えられないっていう研究結果が出ているみたいで。


 そこで諦めればいいものを、何をとち狂ったのかこの研究をしていた古代人たちときたら。


『ならその負荷に耐えられるような人間を探して、そのクローンを量産して人間という種そのものを進化させようぜ』


 というトンデモな方向に研究は進んだらしく。


 結果、そんな人間が現れる訳もなく時は過ぎ。

 結局、この施設の人間は後の事をティナのような存在に託し、逝ったみたいだ。

 

 それこそがあの黒髪の少女なのだろう。

 魔人の遺伝子情報を元に作られたティナのような存在。


 厳密には人間ではない彼女達だが、その寿命は人間と同じくらいらしい。

 しかし、それでは施設の維持など安心して任せられない。


 そこを解決すべく、この施設の古代人達は最後にまたやらかしやがった。


 人間を強化する為の研究。

 その研究成果を無理やりに魔人の遺伝子情報を元に作った娘達に試しまくったらしい。

 その中の数少ない成功例があの黒髪の少女。


 どんな環境でも対応する事が可能で、施設を永遠に管理できるような不老の存在にする事に成功したと資料には記載されていた。

 それと引き換えに、黒髪の少女の感情は失われたのだとか。


 道理で。

 映像であの黒髪の少女を見た時、まるで機械みたいだと思う訳だ。

 本当に……古代人ってロクでもないな!!



 そんな情報を手に入れて。

 俺達はロウクダンジョンを後にするのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る