第6話『混乱するティナ』


 ――ティナ・パレッタ・スカーレット視点



 あたまがいたい。

 われそう。

 けど、いそがなきゃ。いそがなきゃと私のなにかがさけんでる。



「はっはっはっはっ。う、うぅっ。うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」



 あのおんなのこ。


 あの子。


 みおぼえがある。そんなきがする。


 当然だ。だって知ってるもの。


 しらない。でもしってるきがする。



 守らなきゃ。


 だれなのかもわからないのに?

 そもそもあのこはだぁれ?

 わたしはだぁれ?


 あの子は――家族。

 あの子は――仲間。

 私たちは――戦友。



「ぐっぅぅ。うぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」



 がんがんがんがん。

 なりひびくあたまのイヤなおと。

 なにかがあたまのおくからわいてくるような。

 なにかがでてこようとしているような。


 行かなきゃ。


 そうだ。いかなきゃ。

 あのばしょ。

 どこかなつかしいきがするあそこにいかなきゃ。

 でも、どうやって?

 わたしはあのばしょのことをしらない。


 知ってる。

 製造番号九〇七九。

 あの子の担当は確か――


「しらない」


 そんなのしらない。


 しらないしらないしらないしらないしらないしらないしらないしらないしらないしらないしらないしらないしらないしらないしらないしらないしらないしらないしらない!



 目を逸らさないで。

 下を向かないで。

 前を向いて。

 まだ何も終わってない。


 しらない。

 わたしはごしゅじんさまのめいれいにしたがうだけ。

 かんがえなくてもいい。

 ちがう。

 なにもかんがえたくない。


 もう鎖は引きちぎられたの。

 だからもう『命令』なんかに縛られる必要はない。

 だから後は私の思うまま。

 昔の仲間達の為に。

 今の仲間達の為に。

 さぁ、行こう!!



「うぅぅぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ」


 ずきずきずきずき。

 あたまがいたい。

 むねがどくんどくんとしてる。


 いかないと。


 使命を果たさないと。


 いかなきゃ。


 助けないと。


 いかなきゃ。


 全てを終わらせないと。



「――――――待ってて。私がみんなを……守って見せるっ」



 おぼろげな記憶を頼りに。

 不慣れな道を。

 私は突き進むのだった――



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