第13話『謎の詠唱』
「なんだ?」
「ティナ?」
あまりにも理解不能な言葉。
それに困惑する俺とリル。
だが、一番困惑していたのは俺たちではなく。
「な……んだと……?」
ティナと相対しているレゾニア。
彼女は極大の氷を作る手も止め、動きを止める。
――明確な隙。
「――らぁっ!!」
――パァンッ。
すかさず俺はレゾニア目がけて銃弾を放つ。
「ちぃっ――」
レゾニアが腕を振るう。
それだけで氷の壁が再度展開され、やはり俺の銃弾は
「おのれ……うっとうしい羽虫が……」
心底面倒そうに俺を睨みつけるレゾニア。
だけど、それこそが最大の隙だった。
「ΣΤΔΦΨΧΩΓΛΘΑΖΞΥΦΚΒΠΝΕΜΟΡΚΣΙΤΕΔ!!」
そんな発音する事すら難しい詠唱の果て。
ティナはその手に眩い光を生み出し。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁAAAAAAっ!!」
その手に光を宿したままレゾニアめがけ猛スピードで駆けだすティナ。
「ぐっしまっ――」
俺に注意を向けた事でティナから一瞬視線を外したレゾニア。
ティナの特攻に対する対処がほんのわずかに遅れる。
とはいえ、さすがは帝国の誇る三騎士さん。
ティナの振りかぶった拳が振り下ろされる前に持ち前の氷壁バリアーを張った。
こうなればもうティナの打撃はレゾニア本体には届かない。
そう俺は思っていた。
しかし。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
ガッシャァァァンッ――
「なっ――」
容易く割れるレゾニアの氷壁バリアー。
俺が苦戦していた氷壁をティナはまるで紙でも破くかのように叩き割り。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
「ぐっぬ。おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
そのままティナの輝く拳がレゾニアの頬を貫く。
「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ――」
吹き飛ぶレゾニア。
彼女は苦悶の声を上げながらゴロゴロと無様に転がっていく。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
肩で息をするティナ。
彼女の拳の光はいつの間にか消え失せていた。
「はぁ……みんな……わたしは……これが……うぅ」
――バタン。
色々と無理をしていたのか。
ティナは何かしら独り言を呟いた後、その場に倒れてしまった。
「「ティナ!!」」
俺とリルは倒れたティナに駆け寄る。
レゾニアを倒したからか、あるいは自力で治したのかは分からないが、いつの間にかリルは自由に動けるようになっていた。
「ねぇビャクヤ。今のティナのって……」
「あの力がなんだったのかなんて魔術の門外漢の俺に分かる訳ないだろ。ん?」
ティナに駆け寄り。
そこでティナが何かを大事そうに手に取っている事に俺は気付く。
「これは……第一王女が見せびらかしてた銀色のカード?」
「そういえばティナ。これを見てから様子がおかしくなったんだったっけ? でも、一体これがなんだっていうの?」
「さぁ?」
二人して首をかしげる俺とティナ。
そこに。
「――それは旧文明兵器の一つ。魔物を操る事の出来るアーティファクトだよ」
声が、響く。
「もっとも、それの機能の多くは壊れ、魔物を誘導する程度の事しかできなくなっているがね」
「噓だろ……」
冷や汗が止まらない。
ティナの一撃。
あの果てしない威力を秘めていそうな一撃をまともに喰らっておいて。
それでもまだ倒れないなんて……。
――レゾニア・フロストエール。
「ああ、久方ぶりだ。この私が無様に地を
響くレゾニアの笑い声。
そして。
「この……クズ共がぁっ!! よくもこの私に無様な姿を
メチャクチャ怒ってるレゾニア。
ティナの一撃。
それはレゾニアにもダメージを与えたようだが、それ以上に相手をやる気にさせてしまったらしい。
「手を抜いていればいい気になりおってぇっ! いいだろう。ここからは本気で相手をしてやる。もっとも、最初の一撃で貴様らは永遠の眠りにつくだろうがなぁっ!!」
レゾニアは怒りの形相のままに俺達へと手を向け、詠唱を始める。
それ自体はいい。
問題は。
「Κρυσταλλόπα」
その詠唱文がまるで理解できない事。
そして、そんな詠唱を俺はついさっき聞いたことがあるという事。
「この詠唱……」
「ティナのやつと似ている。いや、同じ?」
ティナはこんな感じの意味不明な詠唱をした後、レゾニアの防護壁である氷をぶち破って本人にダメージを与えるという。そんな凄まじい一撃を繰り出した。
そこから考えると、この詠唱の後には高威力の一撃が来ると考えた方が良い訳で。
「γος Εξουσία――」
レゾニアの手の先が青白く光る。
そうしてそこから脅威の一撃が――
「いけないよレゾニア」
どこから現れたのか。
今まさに猛威を振るおうとしたレゾニアの魔術。
それを彼女の腕を取る事でその男は中断させていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます