第11話『暗躍する者-2』
「ソフィア! ソフィアァァァァァァァァァァッ!?」
「「なっ!?」」
氷漬けになりつつもソフィアの身を案じるキャロルカ。
ソフィアの身体がまるで氷細工が割れるかのように砕けたのを見て驚愕の声を上げる俺とリル。
そうしてソフィアの身体が砕け。
後に残ったのは――
「ソフィアじゃ……ない?」
第一王女キャロルカ・クロウシェットがソフィアと愛しげに呼んでいた人物。
その姿は砕け散り、後に残ったのは銀髪銀眼の美少女だった。
腰まで届く長い銀の髪。
世界のは果てまで凍てつかせそうなほど冷たい銀の瞳。
長身のその美少女が身に
いきなり現れたかのようにも見える彼女は、ゴミでも見るかのような目をキャロルカへと向けていた。
「私は帝国三騎士が一人。レゾニア・フロストエール。作戦行動の一環で貴様の妹であるソフィアに扮していたが、もはやその必要もないだろう」
帝国三騎士のレゾニア・フロストエール。
帝国三騎士がなんなのかは知らないが、なんだかとてつもなく強そうだ。
「帝国三騎士!?」
レゾニアの名乗りを聞いて、リルが声を上げる。
どうやら帝国三騎士について何か知っているらしい。
「知っているのかリル!?」
「帝国の実権を握っていると噂されている三人の騎士の事よ。とてつもなく強くて、それぞれが帝国繁栄の為、秘密裏に行動しているんだって噂で聞いていたけど……まさかその内の一人がこの国に入り込んでいたなんて……」
「つまり、その三騎士様が第二王女さんに化けてこの国で色々と動いてたって事か?」
「おそらく……ね」
なるほど、終わってるなクロウシェット国。
モンスターパレードで国が滅びそうでヤバイとか言ってる場合じゃないじゃん。
スパイを国の主要部に入れてずっと気づいてない事の方がヤバイだろ。
「ソフィアは……私の可愛い妹の……ソフィアはどこに!?」
自分の身体が徐々に氷に包まれる中、必死の形相でレゾニアへと尋ねるキャロルカ。
レゾニアは「ふぅ」と心底馬鹿にしたようなため息を吐き。
「どこまでも愚鈍だなキャロルカ・クロウシェット。私は地味で陰湿で目立たぬように生きていた貴様の妹、ソフィアに扮する事でこの国に潜伏していたのだ。そんな私にとって本物など邪魔でしかない。ゆえに、なぁ。分かるだろう?」
本物など邪魔でしかない。
それはつまり、とっくの昔に始末したとしか解釈するしかなくて。
「あ、あ、あ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
怒りの形相で暴れようとするキャロルカ。
だが、その体の大部分は氷に覆われていて、軽く身じろぎする事しか出来ていなかった。
「よくもっ。よくも私の愛する可愛い妹のソフィアをっ。許さない……あなただけは絶対にゆるさ――」
愛する妹を殺された。
当然のようにキャロルカは怒り。
「――うるさいぞ羽虫」
そんな怒るキャロルカをレゾニアはたった一言で黙らせた。
「愛する可愛い妹? 笑止。ならばなぜ入れ替わりに気づかなかった? 私が貴様の妹であるソフィアと入れ替わった時期を教えてやろうか? 三年前だよ。つまり貴様は最愛のソフィアが他人と入れ替わっていたのを三年間気づかなかったという事だ」
「な……」
「そもそも、貴様はソフィアを愛してなどいない。貴様の愚痴には散々付き合わされてきたから知っているぞ。貴様は末の妹である聖女に嫉妬していた。それに引き換え、ソフィアは何も出来ず、誰にも逆らわない従順で愚鈍な女だ。そういう妹こそが貴様にとって都合よかったのだろう?」
「そんな事……ある訳が……」
「否定するのは結構。だが、貴様が入れ替わりに気づかなかったのは純然たる事実だ。ゆえに……なぁ? 羽虫である貴様にもそろそろ理解できたのではないか? 貴様がソフィアに抱いていた感情。それは決して愛などではなく」
「やめ……」
いやいや、聞きたくないと。
そう頭を振りながらレゾニアの言葉から目を背けようとしているキャロルカ。
だけどその体の大部分は既に凍っていて逃げられず。
完全に氷漬けになる前に。
レゾニアはそっとキャロルカへ。
キャロルカがソフィアに抱いていたという真の感情を。
無慈悲に。
その正体をを告げる。
「――ただの優越感だよ。貴様は出来の悪い妹を愛でながら自分を慰めていただけのクズに過ぎん」
「あぁ……あ……あ……」
そのまま。
第一王女キャロルカ・クロウシェットは絶望の表情を宿したまま、全身を氷漬けにされた。
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