第34話『クズなギルド長』
ただのギルドの一職員では対応できないと言われ、俺とリルが案内された別室にて待機すること数分。
突然『バァンッ』と扉を開けてさっきの受付のお姉さんと共にどこかで見た事のあるおっさんが部屋に入ってきた。
「どこのどいつだ!? この私の貴重な時間を奪うほら吹きは。ただでさえ最近はトラブル続きでイライラしているというのにっ!」
部屋に入るなり怒声を上げるおっさん。
やはりどこかで見た覚えがあるような……。
「子供二人でダンジョンの完全攻略など出来る訳が……ってお前はアスカルト家の無能坊主!?」
部屋に入って俺の姿を見るなり、指を指して驚くおっさん。
あ、思い出した。
こいつ、前に俺の試験に立ち会ったギルド長とかいう偉いおっさんだ。
その驚く様子を見てやっと思い出した。
「クソ。もうこの小僧とは関わり合いになりたくないというのに……。アレンはあれから行方をくらますし、ルイス殿とも連絡が取れない。現当主であるラプター殿は小僧と縁を切ったこと自体をなかったことにしようと動いているが……ここで私がこの小僧を優遇してしまえばそれこそアレンに殺されかねん。ならばここはなぁなぁで済ませるべきか――」
なんか難しい顔でぶつぶつ呟いているギルド長。
普通なら聞こえない声量なのだろうが、俺にはバッチリ聞こえている。
ふむ。
アレンというのはまだ見た事のないA級冒険者のアレンさんの事か。
もしくは俺の試験に立ち会ってくれたアレンさんの事か。
そのどっちかの事だろう。
ルイス殿っていうのはクソ兄貴の事だな。
あいつは森を燃やしたりして暴れてたし、連絡が取れないのも無理はない。
そして……ラプター殿か。
それ、俺の親父の名前だな?
という事はあれか?
クソ親父は縁を切ったという小僧、つまり俺とよりを戻そうと動いていると?
なんで?
「むむむ」
「どうしたのよビャクヤ。いきなり難しい顔しちゃって」
「いや、分からない事が一気に増えたなと。ついでに独り言に突っ込んでいいのか悩んでる」
「よく分からないけど……独り言に突っ込むのは良くないと思うわよ?」
「ですよねー」
ギルド長が何やら考え事をしている中、こそこそと相談する俺とリル。
まぁ……いいか。
行方不明になったアレンさんについては正直割とどうでもいいし。
クソ兄貴はどうなろうと興味ない。
クソ親父に関しては少し気になるところだが、あっちがどう動こうが俺はアスカルト家に戻る気などない。
家に戻るどころか、俺はこの国から出ていくつもりだしな。
なので、クソ親父に関してもやはり気にしなくていいだろう。
というか、ノコノコと家に戻ったらクソ兄貴と共謀して暗殺とかされそうだしな。
戻りたいなんて思える訳がない。
そんな感じで俺の中で結論が出る。
すると。
「――こほん。こぞ……ビャクヤ様にリル様でしたか。ダンジョンの完全攻略を為したと聞いたのですが……それは本当でしょうか?」
なんかいきなりへりくだってきたギルド長。
彼の中で色々な葛藤があったようだが、とりあえずこの場はへりくだる事にしたらしい。
もっとも、部屋に入って来た時に暴言を吐きまくっていたから手遅れだと思うが。
「本当よ。アンタギルドのお偉いさんでしょ? ならこのクリスタルが本物かどうか、分かるんじゃない?」
そう言って懐からクリスタルを机の上に置くギルド長。
それをギルド長はまじまじと見つめ。
「この不思議な青い輝き……。偽物ではありませんね。確かに、このクリスタルは本物のようだ」
そう言ってクリスタルを眺めるギルド長。
彼は机の上にクリスタルへと手を伸ばし。
「良いでしょう。これをもってダンジョン完全攻略の証とします。お二方には既定の代金を支払うのでしばしお待ちを――」
そう言ってギルド長が机の上に置いたクリスタルを持って退席しようとして。
「――その必要はないわ」
そんなギルド長よりも速くクリスタルを手に取り、さっと懐にしまうリル。
「このクリスタルをギルドに渡すつもりはないの。これは私が有効活用するわ。だから既定の代金とやらもいらない。そこの女には話したけど私はただ親切心で報告に来てあげただけよ」
そう強く言い切るリル。
しかし、それにギルド長がくって掛かった。
「な、何を馬鹿な事を!? 冒険者の戦利品は何であろうとギルドに納品する決まりであると知らんのか!? 一体誰のおかげでお前ら冒険者が活動できていると思っているのだ!?」
やはりそれが素なのだろう。
丁寧に対応していたギルド長が怒りによってその本性を現した。
「うわぁ……」
あまりにもな態度の豹変に俺も思わず声を出して引いてしまう。
うん。
やっぱ俺こいつのこと嫌いだわ。
なんかクソ兄貴やクソ親父と同じ匂いがプンプンするし。
「分かったらさっさとそのクリスタルを寄越せっ! まったく、ガキが大人の手を煩わせるんじゃないっ!」
強引にリルに迫るギルド長。
しかし――
「
――ダァンッ!!
「ぐはっ!?」
リルへと迫っていたギルド長。
それをものともせずリルは迫って来たギルド長を軽く投げ飛ばし、地べたへと叩きつけた――
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