第33話『攻略報告』


 ダンジョン攻略を終え、ストールの街へと帰還した俺とリル。

 そんな俺達が最初に向かったのは冒険者ギルドだ。

 そこでダンジョン攻略が無事に終了し、ついでにダンジョン崩壊したよと伝えに来たのだが――





「は? ダンジョン攻略を為して、そうしたらダンジョンが崩壊してしまった……ですか?」


 目を丸くして驚くギルド受付のお姉さん。

 ソニアさんではない。

 前に俺の冒険者試験の手続きもろもろをしてくれたソニアさんは、最近なんだか体の調子が悪いらしく、数日前からお休みを貰っているとの事だ。


 という訳で、今は全く別の受付お姉さんが俺達の報告を聞いてくれている訳なのだが。 


「ええ。冒険者じゃない私たちに報告義務なんてものはないから黙っておいても良かったんだけどね。親切で教えに来てあげたのよ。有難く思いなさい」


「は、はぁ……そうですか。ちなみにダンジョン攻略はそちらの少年と二人で成したんですか?」


「ええ、そうよ」


「そ、そうですか……」



 なんだか訝し気な目で俺達の事を見てくるお姉さん。

 どうやら俺達がダンジョン攻略を成した事。それ自体を疑っているらしい。


 そりゃそうだ。

 ダンジョンの完全攻略というのは特Sランクとかいうなんか凄い冒険者でも為せるかどうかという偉業らしい。


 そんなものを子供にしか見えない俺とリルが為したと言っても、そりゃ誰も信じてくれないだろう。



「あの……お嬢ちゃん? 嘘はあまりよくないですよ? それもダンジョンを完全攻略しただなんて。そんな嘘を吐き続けていたらお宝欲しさにこわーい大人たちに襲われちゃうかもですよ?」


 まるでおいたをした子供をたしなめるようにリルに言葉をかけるお姉さん。

 完全に嘘だと思われている。

 しかし、そうなる事はリルにも予想出来ていたのか、彼女は懐に手を入れ。



「お宝ってこれの事?」


 そう言ってダンジョンで手に入れたクリスタルを取り出した。


「それは……まさかクリスタルの破片ですか!? しかもほとんど原型を留めている状態の!?」


「ええ、そうよ」


 リルが取り出したクリスタルを見て心底驚いた様子のお姉さん。

 クリスタルの価値について俺は何も知らないが、二人の反応を見るに大層貴重なものらしい。



「まさか……いや、でも資料で見た通りの……でも偽物の可能性だって――」


「偽物だと思うならどうぞお好きに。本物か偽物か。どう思われても私には関係ないしね」



 そう言って再びクリスタルを仕舞うリル。

 するとお姉さんは真剣な表情を見せ。



「さっきの輝き。まさか……本物? だとしたら……こほんっ。――も、申し訳ありません。私には対応できない案件なので別室で詳しく話を聞かせて貰ってもいいでしょうか?」



 そう言ってガラリと態度を変えてきたお姉さん。

 そんな対応にはもう慣れているのか。リルは驚きもせず。


「さっさと連れていきなさい」



 そう告げたのだった。

 そうして。

 俺達は別室へと案内されるのだった――


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