第14話『認められました-2』


「ともあれ。アンタの力の一端は見せて貰ったわ。なかなかやるじゃない」


「いえいえ、それほどでも」


 褒めてくれるリルちゃん。だが、本当にそれほどでもない。

 俺はただショットガンをぶっ放しただけだしな。


 そんな俺にリルちゃんは先ほどのショットガンについて質問してくる。


「さっきのアレは何回でも使えるの?」


 さっきのアレというのはショットガンによる射撃という事だな。

 あれを連射できるのかと言われると。


「いや、それは無理ですね。と言うのも、銃弾を撃ちきったらまた弾を込め直すか新しい銃に切り替えるかしなきゃいけないんですよ」


「どういう事?」


「そうですね……端的に言うと、何回かは連続で使えます。けど、一定回数使ったら時間を置かないと使えないんです」



 弾を込めるにしても新しい銃に切り替えるにしても少しだけ時間がかかるからな。

 それを聞いたリルちゃんは少しの間だけ考え込み。


「あれだけの威力だものね。そう何発も連続で使えないのは当然……か。やっぱりさっきのは魔術みたいなもんなのかしら? 魔術だって大きいのを撃って魔力がなくなっちゃったら休憩が必要だし……」


 なにやら一人でぶつぶつと呟くリルちゃん。

 そうして自分の中で何かしらの答えが出たのか。リルちゃんは俺の方を再び見て。



「ちなみになんだけど、どれくらい時間を置いたら再度使えるようになるの?」


 なんて事を聞いてきた。

 

「ふむ……」


 他の武器に切り替えて銃撃を再開するなら一秒もかからないと思うが、聞かれてるのは同じ一撃を再度使えるようになるまでどれだけのインターバルが必要なのかって事だろう。

 この場合だと弾切れを起こした銃(ショットガン)を再度発砲出来るようになるまでの所要時間だ。

 そうなると弾を込めるアクション時間だけを計算すればいいわけだから……うん。



「数秒ですかね」


 弾を込めるアクション時間だけならばこんなものだろう。

 そうして弾を撃ちきったショットガンを再度使えるようになるまでのインターバル時間を告げた俺だったが。


「数秒!? なによそれ!?」


 数秒というインターバル時間を聞いたリルちゃんが怒鳴ってくる。

 いや、そんな怒鳴られましても……。

 こればかりはどうやっても短縮できないしなぁ。


 何と言ったものかと頭をポリポリ掻く俺。

 逆にリルちゃんはとても真剣そうに何やら考え込んでおり。



「なによそれ……。つまり、さっきの妙な力をこいつはほぼ連続で何度でも使えるって事? いくら中級下位のクロウウルフが相手とはいえ、それを一撃で倒した術。それを何度でも使えるとすればこいつの実力は特Sクラス冒険者にも匹敵するんじゃ――」



 真剣な表情で一人ぶつぶつと呟いているリルちゃん。

 耳を済ませれば内容は聞きとれるだろうが、どう見ても独り言なので俺はあえてその内容を聞かないようにしておく。


 なにせリルちゃんはさっきTPSプレイヤーについて詳しく聞かないでくれたからな。

 そんなリルちゃんの独り言を聞いちゃうのはマナー違反だと、俺はそう思うのだ。


 そうして彼女の中で何かしらの決着がついたのか。

 リルちゃんはこちらへと向き直り。


「ふ、ふぅん。アンタ、思ってた以上にやるみたいね。さすがはアレンを倒した男と言った所かしら」


 なんて言って再び褒めてくれた。

 うん、まぁ褒めてくれてありがとう。

 ありがとうと、そう言いたいのは山々なのだが一つだけ問題があって。


「ん? あぁ、はい。どうもです。多分そのアレンさんと俺が倒したアレンさんは別人だと思いますけどね」


 リルちゃんはなぜか俺が倒したアレンさんの事をA級冒険者のアレンさんと勘違いしてしまっている。


 だが、俺が倒したアレンさんはそのアレンさんではなく、別のアレンさんだ。

 もしあれがA級冒険者のアレンさんだったのだとしたら、俺は試験初日にいきなり上級冒険者と模擬戦をさせられ、その上で勝利してしまったって事になっちゃうからな。そんな事、あり得る訳がない。


 そう言って無駄だとは思いつつもリルちゃんの勘違いを正そうとしたのだが。


「いやそれ絶対に別人じゃないから。ちょっと前までの私ならアンタのその言葉にも一理あるのかもって思ってたでしょうけど、今や確信を抱いちゃってるから。アンタが倒したのはA級冒険者のアレンよ。絶対に」


 さっきまで一理あると思っていてくれていたのに今は確信を抱いていると断言までして見せるリルちゃん……ナンデ?

 そもそも、見てすらいないのに絶対とか言うのは違うと思います。


「いやいや、それが本当なら俺もちょっとは自信が付くんですけどね? あ、でもあのアレンさん手加減もしてくれてたからなぁ」


「あのクソ外道、絶対に手加減抜きでやられたんでしょうね(ボソッ)」


「え?」


「なんでもないわ。さぁ、そろそろ行くわよ」


 そうして。

 ダンジョンに着くまでの間に更に五体の魔物と出会ったが、どれもこれもショットガンで俺は射殺していくのだった――


 なお、魔物に見つかったのは全部リルちゃんのせいである。

 おかげで俺はショットガンしか使いませんでした。

 そんな脳筋プレイするつもりは無かったのに……。クソゥ。

 

 

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