第13話『認められました』


 ショットガンの引き金をカチカチ鳴らしたり、その銃口を覗いたりしているリルちゃん。

俺はそれを見て。


「ちょっ。おまっ。やめろぉっ!! 死にたいのか!?」


 銃口を覗きながらその引き金を引くなど自殺行為以外の何物でもない。

 あまりにも危険だったので、俺は慌ててショットガンを適当に弄るリルちゃんを止めた。すると、


「なによ」


 不満げな顔で渋々ショットガンを弄るのをやめるリルちゃん。

 しかし、ショットガンは返してくれないしその銃口はリルちゃんに向いたまま。

 正直、いつそこから銃弾が飛び出すか。気が気でない俺である。


「いや、リルちゃんあのな? それはとっっっっっても危ない武器なんだよ!」


「武器?」


「ああ。その武器は銃口……穴から弾を凄い勢いで射出させる武器でしてね? それが今リルちゃんの方に向いてるから危ないよって話なんですけど――」


「???」


 俺の拙い説明では何も分からないのだろう。思いっきり疑問符を浮かべるリルちゃん。

 ただ銃口を自分に向けるのは危険だという事だけは理解してくれたようで、銃口を覗き込むのをやめてくれた。

 更に、先ほど俺が銃を構えた時の姿を参考にしたのだろう。

 リルちゃんは少しぎこちないながらもその手に銃を構えた。


 そのまま引き金を深く引く。

 TPSの武器だからなのか、このショットガンに安全装置なんてものはない。

 なので今度こそその銃口から銃弾が飛び出る。


 はずだったのだが――



 カチンッカチンッ――



「???」



 俺がやったのと同じように引き金を引いたのにも関わらず、何も起こらない事に首をかしげるリルちゃん。

 そんなリルちゃんと同様に俺も首をかしげる。


 あれぇ? なんで弾が出ないんだ?

 弾はまだ残っていたはずだから弾切れはあり得ない。

 見ている限り、リルちゃんの射撃アクションは問題なかったはずだからきちんとショットガンが火を噴くはずなんだが……あれぇ?


「ねぇ」


「はい?」


「これ、さっきのってどうやるの?」


「あー。えぇっとですね。まずそれに弾を込めて――」




 そうして俺はリルちゃんにショットガンをどうすれば撃てるのかのみを教えた。

 念のため少なくなった銃弾を補充し、さぁ撃つぞとリルちゃんが再び引き金を引くが。



 カチンッカチンッ――



 やはり弾は出ない。

 なんで?


「何も起こらないじゃないっ!!」


「あれぇ? おかしいな。ちょっと返してもらっていいです?」


 つまらなそうにするリルちゃんから俺はショットガンを返してもらう。

 そうして適当にその辺の木に狙いをつけて引き金を引くと。

  


 ズガァンッ――



「きゃっ」


 近くで軽く飛び上がるリルちゃん。

 自分が何をやっても操作できないショットガンがいきなり火をいたものだから驚いたのだろう。


 しかし、その驚きはすぐに怒りへと変わったようで。


「な、なによこれっ! どうして私の言う事だけはきかないのよっ!!」


 ガンッとショットガンを思いっきり殴るリルちゃん。

 ああ、そんな風に思いっきり殴ったりしたら――


「~~~~~~」


 殴った方の右手を痛そうにさするリルちゃん。

 ほら言わんこっちゃない。

 ショットガンは破壊不能オブジェクトだからどんなに力を入れて殴ろうが絶対に壊れないんだよ。


 そんなリルちゃんを俺は横目で見ながら、俺は今しがた撃ったショットガンへと視線をやる。

 そして、呟いた。



「しかし……妙だな」


 そう。妙なのだ。

 結局、俺が使ったらショットガンは何の問題もなく発砲出来た。

 なら、同じ手順で発砲しようとしていたリルちゃんも発砲出来ているはずなのだ。

 だが、結果はこの通り。


 同じ手順を踏んでショットガンの引き金を引いた俺とリルちゃんだが、発砲出来たのは俺だけ。

 この事から導かれる結論。

 それはつまり――



「これは……アレか? TPSプレイヤーで出した武器は俺にしか使えないって事なんだろうか?」



 俺が出した銃器は扱い方さえ分かれば他の人も使えるものだと思っていたが、どうやらそうではないらしい。



「てぃーぴーえす? ああ、それがアンタのスキルなのね。確かに聞いたことのないスキルだわ」


 右拳を痛そうにしているリルちゃんが俺の呟きを拾うも、それについて追及してくることはなかった。


 これは後で聞いた話なのだが、世間では相手の持つスキルや能力など。それらを詮索する行為は無礼行為に当たるらしい。

 ぶっちゃけ『TPSプレイヤー』について説明するにはまずTPSそのものについて説明しなきゃならなくて面倒なので、説明せずに済むのはありがたかった。


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