第15話『思ってたのと違った』


「ここが……ダンジョン?」



 ダンジョンと呼ばれる場所へと辿り着いた俺とリルちゃん。

 しかし、そのダンジョンは俺が思っていたダンジョンとは少しだけ違った。


 目の前のダンジョンはまるで遺跡のようで。

 その入り口も人の手が加えられたようにしか見えないものだった。

 天然の洞窟みたいなものをイメージしていた俺にとって、この光景はほんの少しだけど予想外である。



「中は迷路になってるらしいわ。と言っても、最深部以外のマッピングは終わってるから探索の必要はないけどね」


 そう言って懐から地図を取り出すリルちゃん。

 そこには確かに『ストールのダンジョン』と書かれており、精密な地図が載っていた。


 俺はその地図をちょいと借りてみる。

 えっと……。階層が一層二層三層……最深部が第十層か。

 リルちゃんの言う通り、地図によるとダンジョンは迷路になっていた。

 この地図がなければ相当に苦労するのは間違いないだろう。


 しかし。


「庭園に……泉? リルさん、これは?」


「このダンジョンには第三、第六、第九階層に水が流れているわ。そこには私たちが食べられる木の実や食べ物なんかもある。理想としては初日の今日で第三階層まで辿り着いておきたいところね」


 いや、そう言う事じゃなくてですね?

 どうしてダンジョンの中に庭園や泉があるんだよってツッコミたい訳でして。


 もちろん庭園や泉なんていう物がダンジョンにある事、それ自体は非常にありがたい事だとは思いますよ?

 こんな探索者にとって休憩にもってこいのスペースがダンジョン内にあるだなんて、素晴らしいと感謝の舞を踊ってしまいたくなるくらいですとも。


 でも、それとは別でなんか釈然としない想いがあるというか……。


 などと葛藤する俺に構わず、リルちゃんは俺の背中へと触れ。


「さぁ、行くわよ。あ、ちなみに私は基本魔術師だから。上限回数のないアンタと違って何度もポンポン魔術を使う事は出来ないわ。だから基本的にアンタが魔物の相手してね? 援護はするから」


 などと、ダンジョン未経験かつ実力不足で冒険者にすらなれなかった俺に率先して戦えとか言い出した。


「え?」


「ほら、さっさと行くわよ」



 そう言って俺の背中を押すリルちゃん。

 そこにはダンジョン内に潜むと言われている魔物への警戒など微塵もない。


「いやっちょっ――」



 初めてのダンジョンだし耳を済ませたりして魔物の位置を探っておきたい俺だったのだが、背中を押されてまともに索敵が出来ない。

 逃れようにも悲しいかな。リルちゃんは俺より力があるので逃れる事は出来なかった。


 そのままダンジョンへとずかずかと入り込む俺とリルちゃん。

 なので――


「キシャァァァァァッ」



 大きな牙を持った蝙蝠こうもりみたいな魔物が先にこちらに気付き、上から襲ってきた。



「イィィィィィヤァァァァッ――」


 ズガァンッ―― 


 俺はそんな魔物に対して迷わずショットガンを叩きこんでいた。

 幸い、蝙蝠みたいな魔物はその見た目通りショットガンの一撃で死んでしまうようなものだったらしく、一発で撃沈してくれた。


 かくして。


 気配を消してサイレンサー付きの銃で目立たずに魔物を狩ろうと思っていた俺のプランは初手でつまづくのだった――


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