第20話『ストールダンジョン内の死闘』


『荒れ狂え雷光、天災と恐れられるなんじの力、今ここに顕現けんげんせよ』



 魔術の詠唱を始めるリルちゃん。

 そんな彼女の目の前に大きな魔法陣が現れる。

 それは俺が今までに見た事がないほど大きな魔法陣だった。



『優しきいとし子を守るため、その力を私に寄越よこせ』



 バチッバチバチ――


 リルちゃんの身体から発せられる雷光。

 まるで電気でもまとっているかのようにバチバチといっている。

 その電気を含め、膨大な量の光が全て魔法陣へと収束されていく。



『来たれ、いかづち。その雷火にて愛し子の敵を焼き尽くせ』



 そうして。

 リルちゃんの最大魔術が放たれる。



『コアル・ラティオス』


 ゴウッ――


 目にも見えない雷の一撃。

 それがリルちゃんの魔法陣から放たれた。

 瞬間――



「今よっ!!」



 最大級の魔術を放ったリルちゃんからの合図。


「待ってましたぁっ!! うおりゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 それを受けてスタンバイ済みの俺はロケットランチャーをぶっ放す。


 シュゥンッ――


 俺がロケットランチャーをぶっ放すのと同時にリルちゃんの射出した雷の魔術が魔物達へと着弾。

 そして――光が弾けた。



 ドガァァァァァンッ。



「「「イギャァァァアッァァァァァァァァ」」」



 響き渡る魔物達の断末魔。

 無論、それだけでは終わらない。

 俺のロケットランチャーが時間差で魔物達が密集している場所へと着弾する。



 ドゥーンッ!!



 鳴り響く雷の音と爆発音。

 もはやクリスタルの部屋は阿鼻叫喚の状態だ。

 だが、もちろんこれで終わりな訳はない。


「はいドーン。はいドーン。さらにも一つドーン。そして最後にドドドドーンだドンっ!!」



 シュゥンッ――

 シュゥンッ――

 シュゥンッ――

 シュゥンッ――



 放たれるロケットランチャー。

 ショットガンよりも弾を込めるのに時間はかかるが、五発までならそれほど時間を置かずに放つことが出来る。

 そんな訳でとりあえず全弾打ち込んでみた。

 結果。



 ドドドドドゥゥーーーーーーンンンンンッ!!!!!



 

 もはや魔物の悲鳴すら聞こえないほどの爆発音。

 魔物の残骸すら残っているか怪しいほどの高火力。

 だというのに。



「行くわよっ!!」


 ダッと駆けだすリルちゃん。

 俺もその後を追い、クリスタルの部屋へと入る。

 部屋の中は爆風によって滅茶苦茶な事になっており、視界はほぼ封じられていた。


 だが――まだ居る。



『ぐるぉぉぉぉぉぉうう』



 バサァッという音と共に風が吹き荒れる。

 その風で爆風によって巻き上げられていた煙は消え、クリスタルの部屋の全容があらわになった。


 ロケットランチャーやリルちゃんの魔術によって爆発四散したのだと思われる魔物達の残骸。

 それでも残る強そうな魔物達。


 魔物の中には数匹ドラゴンもおり、その内の何体かが翼をバタバタと動かして風を巻き起こしている。

 どうやらこの風はこいつらがおこしたものらしい。


 そして、そんな魔物達が背後に守るようにしているのが――等身大の大きな青い宝石だ。


「あれが……クリスタルか」



 厳かな台座に安置され、ドクンドクンと青い輝きを脈動させながらクルクルと回るクリスタル。

 まるで生きているようにも見える。

 あれがリルちゃんの求めている物か。

 


『ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』


「よそ見すんじゃないわよビャクヤッ!!」



 おっといけない。

 不思議なクリスタルに目を奪われてしまい、少しだけ注意が散漫になっていたようだ。

 もっとも、問題はない。



「うっせぇよこの単細胞どもがっ!!」



 馬鹿の一つ覚えのようにまたまたショットガンを取り出す俺。

 そのまま背後に迫っていたサイクロプスみたいなのにショットガンをお見舞いする。



 ズガァンッ――



「ぐるおばぁっ!?」



 サイクロプスの弱点は頭部にある大きな一つ目。

 なんとなくそれを知っていた俺はその目にむけてショットガンを放ったのだが、見事に命中したようだ。

 もっとも、的が大きいのでヘッドショットを決めるよりも簡単だった気がする。



「まだまだぁっ!! 弾はいくらでもあるんじゃいっ! オラかかってこいやぁぁぁぁっ!!」



『『『ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉうっ!』』』



 倒れたサイクロプスとは違うサイクロプスや、ドラゴンなどの見た目が強力そうな魔物が一斉に雄たけびをあげる。



 さぁ――ファイナルバトルだっ!!



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