第3話『仕事を探してみた』


 ――翌朝。

 俺はアスカルト家から叩き出された。

 朝食を済ませてから家を出るつもりだったのだが、それを咎めたルイス兄さんことクソ兄貴から「とっとと出ていけ平民」と言われてつまみ出されたのだ。



 という訳で――



「腹が……へった……」



 俺は近くの街に行くまでの間、空腹を余儀なくされていた。



「しかも街に着いてもすぐに飯が食べられるわけじゃない。あのクソ兄貴……追放される俺に施しの一つも与えないとか鬼畜過ぎるだろ」



 家を出る時、当面のお金とかは貰えるだろうと思っていた俺だったのだが、予想に反して何も貰えなかった。

 クソ兄貴曰く「今まで養ってもらっていただけありがたく思え」という事らしい。

 おかげであんな家、二度と戻るもんかと改めて決意出来た。



「しかし、だからと言って俺の腹が満たされる訳もなく……とにかく街でなんでもいいから簡単な仕事を見つけて生活費を稼がねば……」




 そうして家から追い出され、空腹を覚えていた俺は昼のうちに街へと辿り着いた。

 子供の頃に何度か来た街――ストール。

 アスカルト家が治める街の一つだ。


 それなりに大きな街だ。仕事の一つくらいは見つかるだろう。

 そう思いながら街に入った俺だったが――



「あれは――」

「アスカルト家の無能の」

「ああ、あの最弱のステータスだと一時期噂になったあれか」

「あの子が……まだ小さいのに可哀想に……」

「関わるな。関わったら俺たちまで巻き添えを食うかもしれんぞ」




 街の人が俺に向けてくる奇異の視線・視線・視線。

 ひそひそ話をしているつもりなのだろうが、内容はばっちりここまで漏れている。



 どうやら俺がアスカルト家から追放された事は街にまで知れ渡っているらしい。

 となると……困った。

 自分達の領地を治めている貴族。その貴族が自分の家から放り出した子供。

 そんな子供に仕事をくれるような物好きがこの街に居るだろうか?


 いる訳がない。


 家から邪魔だと放り出された俺を抱えこんだらアスカルト家からどんな嫌がらせを受けるか。

 そう考えられるだけの頭があれば誰も俺を雇おうとはしないだろう。


 というわけで。

 俺の職探しはいきなりピンチになってしまったっ!!



「ふ……ふふ。だ、大丈夫さ。住人たちから仕事を貰えなかったとしてもまだ道はある。そう――この街にだって冒険者ギルドはあるんだからなっ!!」



 冒険者ギルド。

 各国様々な場所にて活動している冒険者たちに仕事を斡旋あっせんし、サポートを行ってくれるのが冒険者ギルドだ。

 この街ストールにも冒険者ギルドがあり、子供の頃に見に来た記憶がある。

 という訳で――



「よぅしっ。ここから俺の冒険者人生が始まるぜっ!!」


 

 俺は勇んで街の冒険者ギルドへと向かった。


 ああ……お腹がすいた!!




★ ★ ★



 ――冒険者ギルド



「冒険者になりたいんですけど、登録お願いしても良いですか!?」



 冒険者ギルドにたどり着いた俺はさっそく受付に居た黒髪ロングのお姉さんにそうお願いしてみた。

 すると――


「あなたは……ええ、畏まりました」



 あっさり了承を貰ったんだ。

 やったぜっ!!



「では、こちらの資料に目を通してください。了承したならサインの方をお願いします」



「はいはい」


 そうして俺は受付のお姉さんから資料を受け取り、中に書いてある事をよく見もせずにサインを書く。

 それを咎めることなくお姉さんは俺のサインした資料を受け取り。



「――結構です。では、試験は10分後に行うのでそれまで待機していてください」


「え!?」


 試験?

 そんな物があるのか?



 そんな俺の驚きなど知ったことではないのか、受付のお姉さんは「では」と言って奥に引っ込んでしまった。

 

 

「試験か……しまった。試験って何が行われるんだ? まずいな。ここでしくじったら普通に俺ってば餓死コース一直線なのでは?」


 もう少しきちんと渡された資料を読むなりして、お姉さんに色々聞けばよかったと軽く後悔しそうになる。

 だが――



「いや、どっちにしろ他に道はないからな。ダメならダメで……最悪、道端の草でも食べるしかないか……」


 もし純粋に筋力や魔法力を測る試験だったりしたなら俺に合格の目はない。

 俺はダメだった場合はどうすべきかを考えながら、試験の開始を待つのだった――



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