第28話◉アタマハネ

28話

◉アタマハネ


 麻雀にはアタマハネというルールがある。これはけっこう珍しいルールで、要するに2人同時にロンアガリは不可能という決めである。今どきは2人同時に同じ牌でアガリになればダブロンという形でお互いアガリになるのが一般的だが、今回依頼された津田沼の『あおい』という雀荘ではアタマハネルールを採用していた。

「へえ、アタマハネを採用してる店なんて珍しいわね。椎名くんは『ラッキーボーイ』に行くでしょ?『あおい』は私が行くわ」とグループ通話で行き先を話し合い明日の仕事が決まった。『じゃあ、頼んだ』『よろしく、ヤシロ』

「10時からよね。引き受けました」


 翌日


 福島ヤシロの『あおい』初出勤だ。行く前に細かいルールを確認する。


・ダブロンなしのアタマハネルール

・鳴き祝儀あり。赤は各種5に1枚入り。

・リーチ後の見逃しツモあり。

・誤ロンは倒牌後チョンボ。発声のみならアガリ放棄。


(ふむふむ)


 確認した後、場所を検索。


(駅からは少し遠いわね。JRの方が一応近いみたいだけど…場所が悪いわ。こんなとこに雀荘があると思わないし。まあ、私はバイクで行くから駅とか関係ないけど)


 時刻は8時50分


(そろそろ行こうかしら、探す時間もかかるかもしれないし)


「お父さん、行ってくるね」

「気をつけて行くんだぞ」

「はーい」

「と、その前にトイレ」

「トイレはお父さんが先だ!もうギリだから!」と駆け込まれる。

「えー、アタマハネなんて聞いてないわよー。んもう、私だってギリギリなのにっ。じゃあね。行ってきまーす!」


 お父さんのトイレは長いので、ヤシロは店(えにし)のすぐ隣にあるコンビニのトイレを借りて、ついでに雑誌と飲み物も購入した。闇メンにはヒマな時間が多い可能性が常にあるので本は必需品なのである。  

 

 準備を整えてバイクに跨がるとセルボタンでエンジンを起動。


ドウルルルン!ドドッドドッドドッ!


 福島社いざ『あおい』へ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る