第18話◉銀河
18話
◉銀河
一日の仕事を終えると渡邉さんにメールで連絡を入れた。無事終わりました。と。すると向こうから電話がかかってきた。
「どうだ?今日も勝ったか?」
「いえ、やられました。ちょっと強すぎる人が1人いて」
「なんて奴だ?」
「南上コテツって言ってましたね」
「聞いた事ないな。どんな奴?」
「稲妻模様のネクタイをした優男です。パッと見は強そうには見えません。しかし、明らかに力の差で負けました」
「稲妻模様のネクタイ…それ、噂に聞く『ライジン』ってやつかもしれないな。ネットで少し前に話題になってた麻雀の戦術をSNSで公開してる奴。そいつの思考回路がすごいって一部麻雀ファンの中では有名になってて弟子もたくさんいるって。その雀士の写真が稲妻模様のネクタイが特徴だったはずだ」
「あまりない柄ですからね。同一人物の可能性はけっこうありそうです、そっかあ。強いわけだ」
「今日の給料はどうする?」
「負けたし、今日貰えるなら欲しいですね。明日に備えて」
「そうか、じゃあ『えにし』で待ってるから取りに来てくれ。あと、交通費は細かくて面倒だからそれは月末にまとめて支払うからな。いくらかけたかはチェックしておいてもらえるか?」
「承知しました。では約30分後に『えにし』で」
「おう、アイスコーヒーでいいよな。それは奢ってやるから少し話でもしようぜ」
「いいですね。あ、電車きたので切りますね」
「おう」
プッ、ツーツーツー
(っかしとんでもないヤツもいたもんだな。おかげで昨日の儲けもすっ飛んでっちまった。ふりだしだよ。フフフフフ)
椎名はこの敗戦は今までで一番楽しい麻雀だと感じていた。あんなに手も足も出ないくらいの実力差があるとは。そんなことが麻雀に起こりうるとは椎名は知らなかった。
新たな麻雀の可能性を見た。実力でここまで勝てるようになるゲームなのだと。それを知り麻雀が前よりもっと好きになった。
「南上コテツ…別名『ライジン』か…ちっとも大袈裟じゃないな、あの力は神クラスだ。…また会えるかな…」
自分は井の中の蛙だろうとは思っていたが、今日いきなり大海どころか銀河系宇宙を覗いたような。そんな感動を噛みしめていた椎名だった。
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