第14話◉我慢

14話

◉我慢


「てなことがありまして、今は抜けて外に出ているんですけど。参っちゃいましたよ」

「ハハハ!負けなくて良かったな。オーナーにはよく言っとくよ。今度からそう言う時は事前にこちらに知らせるようにって。連絡さえあれば防げるからな」

「あのあともう2時間くらい来客ないままですけど、大丈夫でしょうか」

「大丈夫、この後は忙しくなってくるから、それは気にすることないよ」

「そうですか、ならいいですけど」


 これは渡邉さんの言う通りで、その後は忙しくなってきた。

 ここから先はほとんど入りっぱなしだった。抜けて欲しい時はコーラをオーナーが出すのでそしたらラスハンコールをしてくれという取り決めでいたが一向にコーラが出てこない。

(うん、確かに抜く必要ないもんな)おれは休憩2時間本走6時間ほどでその日の仕事を終えた。麻雀は運良く20000勝ち。その他に日当8000円が出るので今日の利益は28000。スタートは好調だと言っていいだろう。上家はついてなかった。対面の『尾崎』という男がキッチリ絞る麻雀をしていたから親番に連荘が一度も出来なかった。おれは尾崎の対面で本当に良かった。こういう手合いは上にいても下にいても厄介だ。

 初日の仕事を終えて『えにし』で本日分の給料を手渡しでもらう。負けたら次の日の足しにするために初日の給料はその日にもらう約束だった。

「どうだ『龍』の初日は」

「ついてました。手強い人もいたけど今日の所はおれの勝ちです」

「尾崎って奴は来てたか?」

「居ました、対面でした。抜け目なくて強かったですね。あの方が手強いと感じました」

「ほう、何回同卓したんだ」

「5回ですかね」

「奴と5回も打ってよく勝ったな。あいつはここら一帯で一番強い客だ。あいつの絞りには気をつけた方がいい」

「そのようですね。今日も自分の下家を絞り殺してましたよ」

「ハハハ、そうか。尾崎の絞りは健在だったか。なんせあいつは我慢が趣味だからな。絞るのが大好きなんだ」

「我慢が趣味…?」

「ああ、本人がそう言ってたから間違いない」

 だいぶ変な人だなと思った。それが正解かとかは置いといて、普通とは違う人っていうのはやはり特別な所があるものなのかな。そう考えた椎名だった。

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