第12話◉予感的中
12話
◉予感的中
「リーチです」
左座さんからリーチが入る。だが、おれの手も勝負手だからぶつけていく。
危険牌を通しておれもテンパイ。
「リーチ」
言ってしまえば麻雀とは魂のぶつかり合いだ。己自身をぶつけていく、真剣に、思い切りぶつけるだけ。ただ、ひたすら本気でぶつかるだけ。
その衝撃で自信を砕かれた方が負ける。そういう勝負だと思う。
「ゾーちゃんのリーチはいつも高えからなあ…どうすっかなぁ」と例の爪のきれいなお客さんが言う。初見の時はそれらの会話も重要なヒントになる。そういった情報から力関係や雀力数値を予測して正しい対応を行えるようにするのだ。
「ツモです」
二二三三三四五④⑤⑥⑦⑧⑨ 六
「リーヅモドラ…裏。2000.4000の1枚です」
まずは左座の満貫ツモ。たいした手ではないがそれでもこれでリーチ棒含め上下12000点リードされてしまったのは事実である。お客さんは親だったので4000の支払い。
「早いよ、もう4000失点すんのかよ。まいったな」
そうは言いつつも余裕のある表情。この客もまた上級者であるように見受けられた。嫌な予感が高まる。
カランコロン
来客だ。
「いらっしゃいませ!二本木さん。いま23000点だけど東2局の親番2回ですぐ案内できますよ!」
「トップは?」
「34000です」
「いいや待つわ、雑誌も読みたいし。次入るからやってて」
「承知しました。ではもう少々お待ちください」
そう言うと二本木はソファに掛けて今月号の現代麻雀を読み始めた。
「なんだ、二本木さんやらないの?入ればいいじゃない」と僕の対面の爪綺麗君が言う。すると…
「おう、新田か。後ろ向きだから分かんなかったわ。今日は遅刻してねーんだな。ハハッ!次入るから待ってろ裏メン」
出たあーーーー!!予感的中。こいつ裏メンだ。うわあ、バカみたいな卓立ってるぞこれ。身内だけの客不在バトル。こんなとこで負けたらやってられない。ていうかオーナーどこ行ってんだよ。
「あ、おれちょっとトイレ行かせてください」と言い席を立つ。
“オーナーさん。今ひどいことになってます。メンバー2人裏メン2人の卓が始まってます。早く来てなんとかして下さい。よろしくお願いします”と素早くメールした。
(どーなってんだよコレー!)と思いながら卓に戻る。
その頃オーナーの竹林さんは事故渋滞に巻き込まれていてまだ到着しそうになかった。
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