第10話◉屈辱の手順
10話
◉屈辱の手順
「どうだ、驚いたろうヤシロちゃんの強さには」と渡邉は終わったあと椎名と話していた。
「はい、何よりマスターの手順が…屈辱でした」
「手順?なんかあったっけか?」
「マスターが9巡目リーチをしてメンタンピンをツモった東ラスの局です。おれは親でした」
「あったなそういえば、なんか変だったか」
「マスターの手はこう」
四五六②③④④⑤67888 ③ツモ
「で、捨て牌が1九の順で捨ててリーチしてるんです。手出し手出しでした。つまりこれは安全牌として適当な字牌を持ってなかったのでせめて端牌を持っていた。そう読み取れますよね。手牌には全然必要ないんですから」
「ふむ、そうなるな」
「で、問題は1より九が後に出ていることです。渡邉さんの捨て牌には5巡目に4があり、おれの捨て牌には1巡目に1があるんです。ついでに言うと萬子の上は2人とも捨ててません。それなのに九が1より大切にされた」
「どうしてだ?」
「九はヤシロさんの捨て牌にあるんです。つまり親のおれよりヤシロさんが危ない存在だと思って残してるんですよ。そして…」
「実際、その局に反撃をしたのはヤシロだったわけだ。和了ったのはマスターだったけどな。ていうかそれオレも舐められてるよな。スジなのに」
「おれなんて親ですよ」
渡邉はその話を聞いて着眼点がすごいと思った。これなら初見でも相手のレベルと力関係を見抜けるので派遣裏メンには向いていると思ったという。
「じゃあ椎名くんの担当地域は船橋から勝田台までの千葉京成線エリア2とする。たまにエリア外も行ってもらうかもしれないが遠くても交通費は出すので心配しないでいい。今日は帰って大丈夫だよ。今日中にシフトを作って連絡するので、よろしく頼んだ」
「これって派遣方式の裏メンってことですよね?こんな仕事もあるんですね」
「ああ、俺たちみたいな正体をほぼ知られていない裏メンを通称闇メンって言うんだ。聞いたこともないだろ。なんせ闇だからな」
「初耳です」
(闇メンかあ、色々な仕事があるんだな)
とりあえず最初は日給8000円の8時間労働からだった。かなり高いクオリティを求められるプロの仕事にしては給料は安かった。
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