第214話池田家の圭太誘拐未遂が明らかに 関根昇と圭太は、話が合う。
圭太と芳香が、現財務大臣関根昇と会食する数時間前、池田家執事長川口久雄は、大変な窮地に陥っていた。
発端は、川口久雄が、何気なく書棚の整理を、使用人の山本可奈子(池田光子が実家の割烹から連れて来た)に頼んだこと。
その山本可奈子の仕事が丁寧で、書棚の奥深くに保管されていた、先代(池田隆)の書籍まで整理した。
そして池田隆の書籍に、「田中律子さんからの手紙:10年以上前」が挟まっていたことを見つけたことによる。
(山本可奈子は、「手紙の内容」を読み、そのまま光子に渡した)
池田光子も、すぐに「手紙の内容」を読み、早速、執事長川口久雄をリビングに呼び出した。
「川口さん、これは本当なのね」
「先代の指示で、圭太君をつけ回して・・・」
「目的は何?」
執事長川口久雄は苦しい顏。
「あくまでも、先代の指示でして」
「圭太様だけでも、どんな手を使ってでも、池田に取り戻せと」
「両親の了解は、気にするな、とのことで」
「後は、先代が何とかすると」
池田光子が厳しい顔を変えないので、執事長川口久雄は続けた。
「実際には、出来ませんでした」
「やはり名誉ある池田家に犯罪は困りますので」
「ただ、先代と何度も中学の周りを」
池田光子は、頭を抱えた。
そんなことは、故華代からも、律子からも、何も聞いていなかったから。
もちろん、ボンボンの夫聡からも。
「引っ越すのは、当たり前だよ」
「恐ろしい、まだ子供の圭太君を付け回して」
「いくら・・・聡と私に、子供が出来ないからと言って・・・」
「誘拐してまで、池田の後継ぎが欲しい?」
「田中家にまで、理由の無い金を要求して・・・」
「その上、誘拐?」
「ヤクザそのものだよ、先代は!」
「もう、嫌!我慢も限界だよ!」
「いったい・・・何のために我慢して来たの?」
「私は、何も楽しいことがなかった、実家の金ばかり、むしり取られて!」
「全て池田のため、嫁いだ家のためと思って、我慢し続けて・・・」
「でも、何も見返りないよ、意味ないよ、こんな生活」
「こんな屋敷に、何でいなければならないの?」
池田家のリビングでは、悔しさと悲しさで、頭を抱えるばかりの光子、「解雇」を不安に思う執事長川口久雄の沈黙が長く続いている。
一方、麻布の料亭では、現財務大臣関根昇と圭太夫妻の話が続いている。
関根昇
「一度、律子さんに線香をあげて、墓参りもしないと、気がおさまらないよ」
圭太は、静かに頭を下げた。
「そのお気持ちは、母に伝えます、ですが、現職大臣の仕事もあります」
「母も、そのほうを心配すると思います」
関根昇は、苦笑した。
「程度の悪いマスコミ?」
圭太も、少し笑う。
「高山に巨木なし、ご用心に越したことはないので」
関根昇は、圭太の反応が面白い。
「圭太君は、禅語も知っているのか?」
「そう言えば、寛治叔父も、意味不明な禅語を言ったぞ」
圭太が頷くと、関根昇は続けた。
「本当に忙しい時、予算編成の時に、喫茶去って言うんだ」
「あれ・・・迷惑だった、あの杉村さんも苦虫を嚙み潰した顏になったから」
圭太は、クスッと柔らかく笑った。
「忙しい時ほど、間違いが多い、だから、落ち着きが大切、そんな感じでしょうか」
「おっ・・・」と圭太の顏を見る関根昇に、芳香が説明。
「圭太さんは、絶対に残業をしないタイプです」
「何があっても、キッチリまとめて、定時に帰ります」
圭太は、関根昇に、頭を下げた。
「財務省の場合、特に予算質疑の国会開催中は、無理ですよね・・・職員も大変です」
関根昇は、ますます圭太と話をしたくなっている。
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