第204話欠陥住宅団地問題 監査ヒアリング開始

大手建設会社の監査が始まった。

圭太と紀子は、早速ヒアリングで様々な問題をあぶりだした。

まず、営業担当者たちのヒアリングでは、


・営業コンサルタント(指導係)の、パワハラ、モラハラ、コンプライアンス無視の指導。


「ロクに売れないお前らなんて、いつでもクビにできる」

「そのゴミみたいな顔、今すぐに整形して来い!営業は顏が命だ!」

「欠陥住宅?基礎に不安?そんなのお前らみたいなゴミに関係ねえ!」

「売ればいいんだ!地盤沈下?知るかそんなの!」

「それを納得させて売るのが、お前らの仕事だろ?」

「そんなことも、わからなければ、すぐに辞めろ!」

・・・・・

会議を録音していた営業社員がいたので、証拠資料として提供を受けた。


次に施工を監督する立場の役席を呼んだ。

その役席は、問題を軽視していた。

「確かに、下請けは、全て新米で、とにかく安い業者を使っています」

「これも、コストを下げるために仕方なく」

「行政の現場確認ですか?」

「それは、上層部が行政に何かを言ったようで、黙認状態です」

「認可書類はいただきました」

「今後の倒壊の恐れですか・・・」

「あり得ない・・・とは言い切れません」

「しかし、全般的に地盤が弱い地域です」

「ウチだけが、ダメになるとは思えません」

「その時はその時ですよ」

「何しろ、行政の認可もありますし」

「いつ起こるかどうかわからない天災を気にしても、意味がないので」

「今後は、ウチの問題ではなくて、保険会社の問題」

「彼らが払うかどうか、地震保険も火災保険もつけての販売ですから」

(これも、全て録音した)


次に財務担当役席を呼んだ。

質問は、政治献金について。

欠陥住宅を含めて厳しいヒアリングを行い、「結果として」白状させ、情報も収集した。


・現職大臣、与党幹事長、都議会議員、都の幹部への「献金、上納金捻出」のために、稟議書とは異なる極安の下請け業者を使う以外方法がなかったこと。

・浮いた資金は、封筒で各所に届けた。(必ず二人の社員で行った)(後の裏切りが懸念されたので、内緒で音声を録音した)(かつて、知らぬ存ぜぬと裏切られたこともあったから)

・現職大臣は、政権の中でも反主流派から取り込まれている人なので、より多くの裏の政治資金が必要だったこと。

・もちろん、政治資金報告書には記載されない資金。

・ただし、不正な資金授受になるが、秘書が受け取っているので、結局は大臣本人の処罰は難しい場合が多い。

(マスコミの気分次第で、政治家の運命が決まる)

・そのマスコミ各社にも、かなりな広告を出しているので、建設会社側の不備は、ほとんど報道されない。(ないわけではないが、注目を浴びない程度の書き方)

・マスコミは金をもらえば報道しない(苛めない)ヤクザのような体質。

・その意味で、我が社だけでなく、日本中の各建設会社は多くの欠陥ビルと住宅を作っている。


圭太と紀子は、その財務担当役席があまりにも素直に白状することに、疑問を感じた。

「そこまで言っても大丈夫なんですか?」


財務担当役席は、真面目な顏。

「言うだけは言おうかなと」

「上手に対応いただけるものと」

「与党にも、お上にも、トップにも強いとか」

「最近、銀座監査法人は、その面で有名ですよ」


これには圭太は、直接には応じない。

基本的な意見を述べた。

「まず、危険な住宅を、無理やり売らせる指導は問題です」

「今までの営業指導料と比較して、実績を勘案しても、指導料が高過ぎるかなと、」

「そして余計な資金を作り、届けるリスク」

「近隣住民の不安も、耳にしております」

「普通に安全な住宅にしたほうが、いいのでは?コスト的にも」

「少なくとも、御社が建設販売した住宅で、泣く人を出したくないと思いますので」


監査初日は、そのようなヒアリングで終わった。

圭太と紀子は、第一監査部の上司二人とともに、銀座監査法人会長と専務に、ヒアリング結果を報告した。


銀座監査法人役員の対応も迅速だった。

早速、大手建設会社会長を呼び出したのだから。

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