第199話池田商事会長室で今後の協議
池田家執事長川口久雄は、病院で池田聡を見舞い、医師の診断を聞き、池田商事会長室に入った。
(臨時会長代理池田光子に報告するためである)
会長室では、総務部長川崎重行も同席、現状と今後を協議した。
執事長川口久雄は厳しい表情で報告。
「会長代理もご承知の通り、命は取りとめたものの、リハビリには相当な時間がかかるようです」
「具体的には、身体の左側に麻痺、車椅子状態で通常歩行ができるまで回復するか、全く不透明です」
「もっと問題なことは、言語機能が著しく低下していて、車椅子で動けるようになったとしても、会議や宴席に出席は困難と思われます」
総務部長川崎重行は、慎重に臨時会長代理池田光子の顏を見た。
「先月の役員会決議では、田中圭太様を会長として、招請となっておりますが」
「臨時会長代理に一任され、その後は」
臨時会長代理池田光子は、首を横に振った。
「圭太君は、その気はないとのことです」
「もちろん、説得は続けます」
「次回役員会では、その旨、報告します」
「圭太君には、圭太君の人生がある、無理やりも難しい」
執事長川口久雄は、臨時会長代理池田光子を心配する。
「光子様も不慣れな職場、健康面の心配をしてしまいます」
総務部長川崎重行が、一つの提案を出した。
「圭太様とは、かつては同じ部署にいた仲です」
「当時は課長と係でしたが、圭太様の分析には、教えられることも多くありました」
「招請などの難しい話ではなくて、私が、お話をして来る、それはどうでしょうか」
臨時会長代理池田光子は、厳しい顔。
「圭太君が、応じるかしら」
「そもそも、池田商事を辞めた時の圭太君の思いもある」
「圭太君は、お母様の病状を相談しなかったの、そこまで総務部にも人事部にも、池田にも、信頼がなかったの」
「それで誰一人呼ばずに、直葬ですよ、可哀想でならない」
「本当に申し訳ない限りだけど、圭太君は会長命令の人事に背いたとして自主退職」
「そんな簡単に、こっちの都合で、溝は埋まりません」
「そもそも、池田商事の会長職なんて、圭太君は全く興味がありません」
臨時会長代理池田光子は、少し間を置いた。
「もしかすると、池田そのものに、興味がないとも」
「とにかく池田は圭太君にも、もっと言えば、圭太君のお母様に、それほどの酷い事をしてしまったの」
池田光子は、涙声になった。
「私が、圭太君の立場なら、池田を捨てます」
「今さら、ふざけないでよ、そう思います」
軽く考えていた総務部長川崎重行は、肩を落とした。
「池田商事は、将来がどうなるのでしょうか」
「従業員も不安になります」
「非正規を加えれば。、国内だけでも千人以上、海外まで入れれば、3千人以上です」
「全員が家族を支え、働いていて」
臨時会長代理池田光子は、涙を拭いて、再び厳しい顔。
「当面は、私で行きます」
「文句は言わせません」
「圭太君の人生を壊したくない、壊しません」
「これ以上、池田の犠牲にはしません」
総務部長川崎重行は、必死に粘った。
「各種の昼間の会議はともかく・・・夜の接待は」
「女性ですと、難しいことも」
臨時会長代理池田光子は、即座に否定。
「私は、築地の料理屋の娘です」
「気にしないでいいよ、実は慣れている」
「少なくとも、聡のようなアホな失態は見せない」
「無駄な金は使いません」
臨時会長代理池田光子は、そこまで言って、総務部長川崎重行に二つの指示を出した。
「毎日、総勘定元帳の説明を、佐藤絵里に頼みます」
「会長付秘書は、山田加奈に頼みます」
「それで、当面は大丈夫になるので」
総務部長川崎重行は不思議に思いながら、深く頭を下げている。
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