第194話「防犯ビデオ」の再生
紀子と由紀が専務室に入ると、専務高橋美津子は、「防犯ビデオ」の再生を始めた。
まず、池田家執事の佐野好男が、顏を真っ赤にして銀座監査法人のビルに入って来る。
警備員を突き飛ばし、「おい!圭太をだせ!」と怒声。(酔っているのか、ロレツが回っていない)(足も千鳥足、フラついている)
専務高橋美津子が、警備員に守られながら、
「どちら様ですか?面会予約はと聞く。
それに対して佐野好男は、不躾な態度。
「うるせえなあ!池田の執事の佐野だ!」
「とっとと、圭太を出せ!気に入らねえ!」
「圭太の野郎が、俺の電話に出ねえから、わざわざ来てやった!」
「ありがたいと思え!」
しかし、専務高橋美津子は毅然とした態度。
「お引き取り願います」
「まずは、アポイントを取られてから、お越し願います」
「それから、個人的なことは、個人間で」
佐野好男は、首を傾げた。
「その・・・アポ・・・何だ?俺は富士宮の田舎もんだ」
「わかんねえよ、そんな洒落た言葉、だから俺には関係ねえぞ」
専務高橋美津子は、再び毅然とした言葉。
「お引き取り願えませんか?」
「もし、それでもと言うなら、警察も近くにありますよ、連絡します」
途端に、佐野好男の表情が変わった。
(ハッと、焦りのような顔)
「ポリ公に?それはちょっと・・・」
そのまま、踵を返して、銀座監査法人のビルを走って出て行く。(逃げ出すように)
専務高橋美津子は、防犯ビデオの再生を止めた。
「その後、警備員に、佐野好男の後を追わせたの」
「どうやらレクサスを路上駐車で駐車違反、しかも酒気帯び」
「警察に捕まって、土下座して謝って、勘弁してくれと泣いて騒いで、通行人も多いのに、恥を知らないのかな」
「俺は田舎者で、都会の法律を知らないとか、騒いだけれど、どうにもならないみたい」
紀子は、二つの心配を言った。
「池田光子さんには、ご連絡を?」
「それと圭太君にも連絡を?」
専務高橋美津子は、頷いた。
「池田光子さんには、防犯ビデオを切り取って、スマホに送りました」
「駐車違反と酒気帯びの情報は、メッセージで」
「池田さんは、本当に申し訳ないと、声を震わせて謝って」
「それから圭太君には、直後にメッセージで連絡しました」
「無関係ですが、申し訳ないと」
由紀は、不安な顔。
「圭太さん、何かあったのかな」
「池田家とトラブルなのかな」
紀子は、考えた。
「おそらく圭太が嫌いな人」
「圭太は、池田家とは関係がない、はっきり言っている」
「少なくとも、執事より、当主の甥が格上のはず」
「その圭太に、池田家の執事が、呼び捨てで、会いに来た」
専務高橋美津子は、首を傾げた。
「律子さんは、旧姓里中律子さん、元大蔵省の大幹部里中寛治さんの実の娘」
「旦那様は、田中隆さん、元優秀な弁護士、上の中央法律事務所の所長と同期で大親友、若くして亡くなったけれど」
「でも、池田家と関係があるなんて、一言も言わなかったよ」
由紀も同調。
「私の母も、長い女子校からの友人ですが、聞いたこともないとか」
紀子は、まとめた。
「要するに圭太は関係を持ちたくない」
「池田家の執事は、圭太に良い感情を持っていない」
専務高橋美津子のスマホが鳴った。
池田光子からだった。
「はい・・・明日、来られると?それは、はい」
「圭太君を同席させて欲しいと?わかりました」
「圭太君を戻すようなことではないと?了解しました」
スマホを机の上に置いて専務高橋美津子は苦笑い。
「あなたたち、明日はお昼を持って来ないでね」
意味不明な紀子と由紀に、また苦笑い。
「特大、最高の鰻重が来るらしい」
由紀は紀子の顏を見た。
「圭太さん、食べきれるのかな」
これには、紀子と専務高橋美津子も、笑っている。
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