第188話紀子は圭太に張り付く。圭太は性格が悪い。

私、河合紀子は、圭太にベッタリ張り付いている。

圭太が作成する「監査報告書」のチェックをするため。

しかし、ミスはないし、作業も速い。


(私は、誤字脱字も多く、文意不鮮明、しかも遅いと圭太に言われた)

(だから、少し切れて、圭太に投げた)

(マジに気に入らないけれど、蹴飛ばしたくなったけれど、仕事は圭太が上)

(心血を注いだ監査、そんなことを圭太から聞いたことがある)

(残念ながら、私は、そこまでは・・・ないなあ)


そんなことを思っていたら、圭太は小憎らしい顔だ。

「さっさと見ろよ」

「時間は無限でない、ボケた顔するな」

(ボケた顏って何だ!と怒ったけれど、見とれていたのは事実)


「はい・・・ごめんね・・・見ます」

(でも、気に入らないから、足を踏んであげた)

(痛そうな顔するし、うれしい)


でも、文句がつけられないのでOKを言ったら、また呆れ顔。

しかも、とんでもないことを言って来た。

「紀子、チェック能力ないのか?」

「監査士失格だ」


そこまで言うなら、私にも意地がある。

目を皿にして、再読。

(目が痛いよ・・・額にシワが・・・嫌・・・曲がり角なのに)

でも・・・見つからない。

(圭太一流の陰険ジョークかと思った)


泣き顔になっていたら、圭太はマウント顏だ。

「数字の大文字と小文字、時々変に」と示唆して来た。


「あ・・・時々って・・・3か所」(見つけた!えへへ)


ところが、圭太は性格が悪い。(きっと生まれつき)

「正確には、6か所」と示して来るので、私は「あ・・・」とへこたれた。


そして、圭太は、ますます性格の悪さを発揮した。

「もう、直してある、紀子に見せたのは、修正前の報告書」


私は、マジにむかついた。

「私を、遊んだの?」(圭太の足を踏み続けた)


圭太は、するっと私の靴から脱出。

(そういう逃げも上手いなあ)


「これが、実務をした人と、監査だけの人と違うところ」

「紀子も、現実の苦労を、したほうがいい」

「特に行政に出す資料は、迅速正確を求められる」

「数字の大文字と小文字1字間違えても、突っ返される」

「俺以上に性格の悪い小役人ばかりだ」


そう言われると、私も、どうしようもない。

「確かにね、机上だけで」

(はい、完敗いたしました)


その圭太が、別の話を言って来た。(と言っても、仕事)

「午後、出かけたい」

(お昼は、愛妻とだよね)(私は捨てられたし)


「どこに?」

(でも、デートだよね、仕事とはいえ、背徳感ある)


圭太

「次の監査対象」(口が短い!)


「大手の住宅メーカーだよね」


圭太

「昼間から営業がタムロしている店があって」

「そこで、情報を仕入れる」


私は笑ってしまった。

「まるで刑事みたい」

「生の情報か・・・面白いかも」


そこまで言って、圭太はスマホの画面を見ている。

少し嫌そうな顔だ。

(おい!仕事デートは出来るの?)

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