第182話池田光子に圭太の「噂」としての献策①
私、池田光子がホンワカとしていると、圭太君から説明があった。
「芳香は、昔からの知り合いです」
(余計なことを言わない、端的で圭太君らしい)
「芳香さん」は、顏を赤らめて自己紹介。
「築地に家がありまして、圭太さんのお父様に、命を救われて、そういうご縁もありまして」
「お母さまの律子さんに、親しくしていただきまして、お料理もここの家で教わりました」
私は、ますます、うれしくなった。
「まあ、築地なの?」
「私も築地育ち、築地に実家があるの」
芳香さんは、可愛らしい笑顔。
(もう、この笑顔で気に入った、大好きな顏)
「はい、存じております」
「素晴らしい老舗で、何度か両親と」
私は、それよりも、律子さんの名前が出たほうがうれしい。
「律子さんとは?」(なれそめを聞きたかった)
芳香さんは、圭太さんを少し見た。(不安そうな顔で)
圭太さんが頷き、話しだした。
「少し、事情がありまして、圭太さんのお父様のお墓参りに」
「その時に、律子お母様にお逢いして、ここの家に」
「・・・いろいろ親しくお話してもらいまして」
「励ましていただいて、お料理、お裁縫も教えていただいて」
「事情」は気になったけれど、律子さんが、そこまでやさしくした女の子。
きっと、それだけのものがある子と思った。
私も、この子と話をしたいなあと思っていたけれど、圭太君にそれでは申し訳ない。
頭を下げて、圭太君に「池田商事の実状」を話した。
とにかく、「何かの知恵、アドバイス」を欲しかったから。
予想通り、圭太君の表情は冷ややか。
(芳香さんを紹介した時と別人)
「まず、私は、池田商事の人間ではありません」
「既に別会社で働いております」
「コメントする立場にありません、控えます」
「まずは、池田商事自らが、改善案を立案、実行するべきなのでは?」
確かに、至極当然な話と思う。
自分の家の整理整頓であって、既に辞めた人にアドバイスを仰ぐことは、あり得ないと思う。
でも、そこまでの事態であることも、感じ取って欲しい。
圭太君だから、頭を下げて、聞きに来たのだから。
(芳香さんは、黙って、目を伏せて聞いている)
圭太君は、ますます厳しい顔になった。
「私の母は、里中家で育ち、田中家に入りました」
「池田との血縁云々・・・そういうことが耳に入って来ますが、そもそもの事情からして、いかがなものかと」
「私は、里中と田中の縁を大事にするべきと思っています」
この言葉で、私は圭太君に感心した。
池田との血縁だけを騒ぐ役員(池田聡を含めて)もいるが、圭太君の言う通りなのである。
圭太君は、まず田中家、それから里中家の両家の祭祀をするべき立場。
池田家のこと(将来)まで、責任をかぶせるのは、実に酷で恥ずかしいと思う。
(常軌を逸している)
(そもそも、律子さんを、金のために華代さんの娘と認めなかったのは、池田家なのだから)
※池田商事の多額の借金肩代わりを申し込んで来た宮田隆と結婚させるために、華代さんは、里中寛治さんとの結婚を諦めさせられ、律子さんを手離すことを余儀なくさせられた)
肩を落とした私に、圭太君が声を掛けて来た。
(声がやさしくなった)
「噂では、日々の締めも合っていないとか」
「私まで頼って来たことも、あります」
私が頷くと、圭太君。
「人事権が会長代理にあるのなら」
「あくまでも、噂として聞いてください」
私は、圭太君をじっと見た。(すごくありがたい気分)
圭太君は、冷静な口調。
「まず、山本美紀の仕事を佐藤絵里に」
「山本美紀は、雑務に、つまり金額入力がない職務」
私は、頷いた。(実に簡単にできることだから)
そして、総務部長についても、聞きたくなった。
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