第179話河合紀子と佐藤由紀 紀子は圭太の考えを感づいているようだ
出勤時、私、佐藤由紀の、少し前を、河合紀子が歩いている。
どうしようかと思ったけれど、結局、走り寄って一緒に歩いた。
「おはようございます」
河合紀子の目が腫れている。
(やはり、圭太さんを平野芳香に奪われ、ショックは隠せない)
(おそらく、昨日の夜は激しく泣いた)
(ずっと一緒に仕事ができると、冷静さを装ってはいたけれど)
「あ・・・由紀さん、おはようございます」
「辛いですよね、お互いに」(やばい、また本音そのものだ)
「うん、まさかだよ・・・」(泣きそうな声)
「あの圭太さんを押し切った、圭太さんが認めた女」
(敗北感もある)
「圭太は、大丈夫かな」
(・・・さすが・・・同級生、呼び捨てまで、できるのに)
「大丈夫、圭太さんは、崩れない人ですよ、何をしても」
(少なくとも私の前では)(私は酔いつぶれて迷惑かけた)
「重い暮らしが好きなのかな、ほとんどでしょ?」
(?意味わからない)
「大学の時は、学費のために、4年間全く休みなしでバイト」
「デートなんてできなかった、圭太の喫茶店の休憩時間に、その喫茶店で話しただけ」
「何の話をしたんです?」(聞きたくなった)
「面白くもない、会計の話」(・・・恋愛ではないのか)
「でも、私だって、日比谷高校の映画研究部で、後輩の女の子の、単なる一人」
「しかも、よく覚えていなくて」(マジにガッカリしたな)
河合紀子が、私の脇をつついた。
「後ろに、新婚夫婦が」
振り返った。
「・・・圭太さん・・・笑って・・・」
「芳香ちゃんも・・・顔がピカピカ」
河合紀子
「圭太・・・少し顏に肉がついたかも」
私も、目を細めた。
「確かに・・・お昼も食べていますよね」
河合紀子
「その意味では完敗だ、マジに小食だったから」
私は、嘆き節。
「私なんて、作って来ても、食べてもらえなかった」
河合紀子がため息をついた。
「でも、今さらだよね」
私も同じようなもの。
「まあ・・・不幸は望まないです」
河合紀子
「披露宴するのかな」
私は、ドキッとした。
「その他大勢で出るしかないのかな」
河合紀子
「第一監査部だから、何か・・・司会補助?」
私も思案した。
「何もお役に立てないのも、女がすたる」
(母の受け売りだ、マジに)
河合紀子が笑った。
「確かに、今のままでは、女がすたるか」
そこまで言って、河合紀子は、急に話題を変えた。
(実にマジな顔)
「ねえ、池田商事の経営分析してみたいの」
私は、話題の変化に、驚いた。
「ああ・・・例の圭太さんが、血縁とかの話で?」
河合紀子は、マジな顏を変えない。
「圭太は、おそらく意地でも、戻りたくない感じ」
「でも、池田は戻したい」
「そうなると、圭太は何を考えるのかってこと」
「おそらく、圭太の思考パターンは?」
私の背筋に冷やっとした感覚が走った。(すぐにわかった)
「もしかして・・・そんなことを?あれを?縁があるのに?」
河合紀子は、頷いている。
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