第178話池田商事の惨状 池田光子の動き
圭太が「一身上の都合」で池田商事を去ったのは、3月中旬、決算前。
以降、池田商事では、山本美紀の凡ミス(金額、数量、日付の誤入力)が多く発生。
それを上司が注意すれば、大泣きになり、逆ギレの連発。
「パワハラです!上司のあなたの指導が悪いんです!」
「圭太さんを辞めさせたからです!私の責任ではありません!」
「入力多過ぎです、システムが面倒過ぎ」
(どれほど凡ミスであっても、自分のミスを絶対に認めない)
(それ以上注意すると、机の上はそのまま、帰宅してしまう)
そのような日が決算日(3月末日)まで続いたのだから、実際のところ、決算そのものが合っているかどうかも不明。
決算書類の作成は、去年までは圭太に「お任せ」の状態であったので、現状、誰もできる人はいない。(かつて担当していた社員も、既に退職)
また、最近、山本美紀は、とんでもないことを言い出して、周囲を唖然とさせたことがあった。
「全員で圭太さんの家に押しかけて、戻ってもらうようお願いしましょう」
「圭太さんは、池田商事創業家に縁がある人なんでしょ?」
「だったら、戻って責任を取るのが当たり前じゃないですか」
「役員に戻る前に、総務に戻るのが、常識と思いますよ」
山本美紀を他部署に異動させ、よりマシな佐藤絵里を代わりにと言う声も高まっているが、これも進まない。
総務課課長川崎重行と総務課係三橋義夫が、総務部長吉田満とソリが合わない。
だから、同じ総務部内であっても、人事配置変更を言いたくないのである。
(決算書類の不備で、総務部長吉田満に赤恥をかかせたい、そんなタクラミもある)
その総務部の混乱を面白そうに見ているのが人事部長の宮崎保。
総務部長吉田満は、自身の不倫問題で、決算など全く関与できる状態にない。
この状態で、吉田満の不倫問題が「弾ければ」、その時点で自分が総務部長になる。
(不倫問題の「弾け」を心待ちにしている状態)
また、人事部長宮崎保を、常にけしかけているのが、国際部長の島田覚。
「待っていないで、役員会に、不倫妊娠女を呼べばいい」
「役員全員の前で、不倫男と対決させるのも面白い」
「人妻社員が、総務部長と合意の上と言うか、見物だ」
「人事部長なら、その権限はある」
「本部呼び出し権限もあるだろう」
ただ、人事部長宮崎保は、元来慎重な性格。
「どうせ、すぐに弾ける」
「池田光子会長代理も、怒っている」
「下手に動くこともない」
(結局、総務部の改善は進まない)
さて、会長池田聡の状態は、芳しくない。
一命は取りとめたものの、言語機能の回復が遅れている。
リハビリにも取り組むが、すぐに疲れてしまうのか、ベッドに寝てしまうので、リハビリが進まない。
臨時会長代理池田光子も、初めての会長室での職務と、夫池田聡の見舞いで疲れがたまっている状態。
「こんなことで、どうやって株主総会ができるの?」
「去年までは、シャンシャン総会だから、よかったけれど」
池田光子は、結局、圭太を思った。
「池田商事に戻らなくてもいい」
「何とか、アドバイスをもらいたい」
「頼りになるのは、圭太君だけ」
病院から会社に戻る車の中、圭太にメッセージを送っている。
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