第175話紀子は由紀に電話をかけた
圭太を不思議な思いで見送った後、河合紀子は、佐藤由紀に電話をかけた。
(会社の先輩として、圭太を想った女として、佐藤由紀が心配だった)
紀子
「河合です・・・由紀さん?」(いつもの冷静な口調)
由紀
「あ・・・はい」
(由紀は、まさか河合紀子から電話が来るとは思っていなかった)
紀子
「あのさ・・・大丈夫?」
由紀の声が湿った。
「全然・・・起き上がれないです」
「河合さんだって・・・」
(河合紀子も圭太を好きなことを、重々承知していたから)
紀子は、口調を柔らかくした。
「名前でいいよ、由紀さん」
「今さら・・・フラれ女同士だよ」
「マジにまさかだよ」
由紀は肩の力が抜けた。(監査では怖い先輩だったから)
「そうですね、いきなり入籍って・・・対抗できませんよ」
紀子は、「平野芳香と圭太の父の件」を伝えた。
佐藤由紀の声が変わった。(明らかに動揺した)
「え・・・マジですか?」
「あ・・・聞いたことある・・・」
「あの時の小学生女子?」
「それを知っていて圭太さん?」
河合紀子は、また説明。
「圭太のお母様も、あの子を受け入れて料理まで教えて」
「圭太は・・・あの子だけは、突き放せないって」
「圭太は、親父は、あの子だから、かばって死んだわけではない」
「だから、責めたくないと、責める理由もないと」
「・・・気持ちは残る・・・とは言ったけれどね」
佐藤由紀は、気持ちが揺れた。
「うわ・・・重いですよね、それ・・・」
「圭太さんが、可哀そうな気もする」
「そんな思いを背負って・・・入籍して・・・」
「あの子が良くても、圭太さん・・・」
河合紀子は、本音。
「まさに恋も愛も、なんか・・・普通でないよ」
「圭太が心配」
佐藤由紀も同意。
「そうですよね、圭太さんの心が大きい・・・大き過ぎるのか」
「普通なら、避ける子ですよ」
河合紀子
「圭太も、最初は、その気はなかったかもしれない」
「朝ごはん作ってお昼作って、圭太も拒めなくて」
「結果として、あの子が、圭太の壁を壊したことは事実」
「残念ながら、私では壊せなかった」
佐藤由紀
「私なんて、突き放されました、かなり本気で迫ったのに」
河合紀子
「圭太なりに、結論、とか責任を取ったのかな、いつまでも中途半端ではよくない」
そして、少し笑った。
「仕分けされたんだよ、我々は」
佐藤由紀も、これには笑った。
「まあ・・・結論的には、そう言うしか」
河合紀子の声が、少し明るくなった。
「でもさ、圭太が言ったの、私とは、ずっと何十年でも一緒に仕事したいって」
「それ聞いたら、何か・・・安心しちゃってね、毎日圭太を見られるって」
佐藤由紀は、不安になった。(自分の仕事に自信が持てない)
「あの・・・私について何か?」
河合紀子
「いつも私が言っていることと同じ」
「由紀ちゃんは、仕事で感情に走るってこと、それの改善かな」
佐藤由紀
「そこを改善すれば、圭太さんに毎日会えるのかな」
河合紀子は、それには答えず、声を小さくした。
「池田とは、関係を持ちたくないみたい」
「マジに嫌がっている」
佐藤由紀も声を落とした。
「戻したくないです、会えなくなるから」
「圭太さん頑固だから、曲げないと思うけど」
河合紀子
「そこは協力しようよ、圭太のために」
「圭太も、何かを考えているみたい」
「・・・会計士としてかもしれない」
佐藤由紀は「はい!」と力強く返している。
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