第168話「へその緒」は受け取らないと決めた 親公認の押しかけ
圭太が目を覚ましたのは、午後7時。
実に中途半端な時間と思った。
胃は、小康状態。(軽食なら食べられる程度)
また、池田華代と母律子の「へその緒」を、考え始める。
「そもそも、俺には不要なもの」
「へその緒で何ができる?何をする?」
「池田家に戻る気はない、戻る理由がない」
「母さんは、池田家から、不倫の子として、捨てられた」
「今さら池田が戻れと言っても、戻る道理はない」
「それに、両方とも、この世にいない」
圭太は、「へその緒」を受け取らないと決めた。
つまり、財産も含めて、池田家とは、縁を完全に切るということになる。
「池田華代さんの遺言もあるけれど、あれは彼女の気持ち」
「母さんも、俺も欲しくはない」
「母さんは、里中家で育ち、俺は田中家で育った」
「池田家から、何の恩を受けたわけでもない」
「華代さんの財産は池田家で処分が筋」
圭太は、ソファから立って、母律子の部屋に入った。
タンス類、洋服、宝石も、タンスの中にある。
相続税申告に必要な書類は別にして、全てが処分対象になる。
これも、母律子が勤めていた税理士事務所に相談しようと決めた。(遺品整理は、よくわからないため)
圭太は、そこまで決めて、マンションを出た。
コンビニで軽食を買うためである。
月島の通りを少し歩いた時、スマホが鳴った。
芳香だった。
「圭太さん、お夕飯食べました?」
圭太は、素直に返す。
「今から、コンビニに行こうかなと」
「昨日から、ありがとう」(これで、電話が終わると思った)
ところが、芳香の声が弾んだ。
「今から、行ってもいいですか?」
圭太は、戸惑った。
「何か用事が?明日から仕事」
芳香は引かない。
「もう嫁です、一緒に寝るのが当たり前では?」
「親は、圭太さん次第と、公認を得ました」
「親は。、そんなに遠い距離でないと、全く気にしていません」
圭太は、芳香に負けた。
「コンビニにいくけど、荷物は大きいの?」
芳香
「まあ、大きいかな、重い」
「味噌、お米、いろいろです」
「あ・・・制服もあります」
「父の車で行きます」
圭太
「コンビニの前で待つよ」
芳香の声がまた弾んだ。
「はい!今、車発進しました」
「5分で着きます!」
追加があった。
「プリンアラモード食べたいです!」
実際、日曜夜の築地と月島の距離なので5分もかからなかった。
父保は「もう任せました、妻にもお尻を叩かれてね」と圭太に笑った。
芳香と圭太、芳香の父保まで一緒にコンビニで買い物をして、芳香の「大き目の荷物」は、3人でマンションに運び入れた。
保を見送って(本当にすぐに帰った)、圭太と芳香は、ソファに並んで座る。
(圭太は鮭のおにぎり、芳香はプリンアラモードを食べる)
芳香は、圭太に身体を寄せた。
「親公認の押し掛けです」
圭太は、受け止めた。
「というより、芳香が我慢できなかったの?」
芳香は、目を潤ませた。
「だって、圭太さんが心配ですから、一緒でないと不安」
「父も母も圭太さんが痩せすぎているので、お世話しなさいと、だから公認」
「その前に嫁だから、当たり前です」
圭太は、芳香の髪を撫でた。
少し撫でた後、横抱きにした。
「明日、指輪、そして籍を」
芳香は、圭太にしがみついて泣き出してしまった。
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