第162話圭太と芳香の伊豆長岡②圭太は芳香を嫁にする。

私、芳香は昨日、緊張して全く眠れなかった。

圭太さんが、伊豆長岡温泉に行くと聞いて、「一緒に」と無理やり迫った。

「もしかして、他の女性と?」と不安になったから。

紀子さんや由紀さんでなくても、伊豆長岡にいるかもしれないし・・・

圭太さんに「はしたない娘」と言われるのも、心配だったけれど、それ以上に絶対に、他の女性に取られたくなかった。


母和美にも、相談した。

「芳香は、女として想いを?決めたんだね」

「圭太君なら、芳香と何があっても、認めます」

「お父さんも、いつでも、出来れば早くと言っています」

「芳香が圭太君を女として、嫁として支えなさい」

「とにかく、律子さんも亡くなって、本当は一人ですごく寂しいはず」

「圭太君、今のままでは、身体壊すよ、あの痩せ方は異常、見ていられない」

そこまで言って、母和美は、私の背を押した。

「行きなさい、芳香」

「圭太君なら、いい」

「私も圭太君は、好き」


圭太さんと温泉旅行で一緒だから、(自分から望んだのだから)当然抱かれることも覚悟している。

それ以上に、抱かれないほうが不安。(圭太さんは、気難しい時があるから)

でも、家族風呂を無理やり迫って(顏は真っ赤、脚が震えた)、圭太さんは手を握ってくれた。(わかってくれたのかな・・・泣けるくらいにうれしい)


家族風呂の入り口で、圭太さんが聞いた。

「俺でいいのか?」(やさしい声で、私は潤んだ)


「はい」(声がかすれた)


圭太さんが、家族風呂の扉の鍵を閉めてくれた。

(もう、心臓が破裂しそうに鳴っている)


私は、圭太さんの浴衣を脱がせた。

(嫁の決意を込めた)(最初は恥ずかしかった)

(でも・・・圭太さん・・・うん・・・よかった)


自分の浴衣は、全くためらわない。

(見せつけようと、自信あるもの)

全部脱いで、二人の浴衣を揃えて、脱衣籠に。

(本当に夫婦みたい)

(でも・・・私・・・恥ずかしいくらいに、あふれている・・・)


圭太さんは、また私の手を握る。

「芳香さん、きれいだ」(そこで言われるから、脚がふらつく)


私は圭太さんに、身体を添えた。(ペタンと)

「圭太さんも、立派です」

(言って恥ずかしい・・・また本音だ)


洗い場で、一緒に洗い合う。

(もう、必死、蕩けている)


・・・愛し合った・・・思い切り・・・


・・・天国に何度も・・・


圭太さんに、思い切り、好きって何度も言えた、泣いていた


湯船で、圭太さんに、ペタンとくっついた。

「芳香でいいです」

「もう、圭太さんの女ですよ」(嫁って言いたい)


圭太さんは、私の肩を抱く。

「今まで・・・恋とか愛とか、絶対に考えてはいけないって決めて、生きて来た」

「辛いけど、そうでないといけないって」

「気難しくて、孤児の俺だから、相手に悪いと思っていた」


私は、圭太さんの言葉が悲しい。

「孤児って、圭太さん、ご立派なお家です」

「だめです、そんなの、圭太さんは幸せにならないと困ります」

「私の命は圭太さんのものですよ」

「そう思って生きて来たんです、これからもです」


圭太さんは、やさしい顔だ。

「そんな頑固を、芳香が壊してくれた」

「まさか・・・と思ったけれど・・・」

「芳香だけは、誰とも別で、これは運命かなと」

「身体が先になったけれど・・・心も決めた」


私は、圭太さんの言葉の意味がわかった。

(相変わらず、難しい)

「嫁ですよ、もう、どうとでも、お好きに」


圭太さんが、ビクッとした。(私のイタズラを察した)

「好きにしたいのは、芳香?」


私は、もっとイタズラを強めた。

「だって、私の旦那様ですから」


圭太さんは、しっかりした声。

「明日の夜に、芳香の家で、ご両親に挨拶する」


私は泣いた。

「だめです、圭太さんのご両親の前で、全員で」

「もう嫁ですから、圭太さんの家がいい」


圭太さんの目も、潤んでいた。

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