第156話芳香との昼食を楽しむ 池田光子と電話
圭太は、平野芳香との昼食が楽しい。
ほぼ無理やりに食べさせられている感はあるけれど、何より芳香のハツラツとした笑顔が、見ているだけで、楽しい。
「どんどん食べてくださいね」
「はい、お茶も飲んで」
「圭太さんの好きなアサリの佃煮です」
「律子さんから全部好みは聞いて、メモしてありますよ」
圭太もたまには、言葉を返す。
「お米の炊き方もいいね、食が進む」
芳香は、その一言を数倍にして返す。
「お米は、水加減、蒸らし加減ですよ」
「高級米でも、水加減を間違えれば、美味しくない」
「これは、しっかり叩き込まれました、母からも、律子お母さまからも」
圭太が懸命に食べて飲み込むと、また、スッとお茶が差し出された。
「ねえ、圭太さん、明日からの伊豆長岡お願いしますね」
「両親ともOKです、楽しみだなあ」
「温泉、刺身、富士山見えるかな」
「圭太さん、たくさんマッサージしますよ」
圭太は、断りが難しい。(まさか芳香の両親がOKするとは、予想外だったから)
「まあ・・・あくまで、妹扱いで」
「旅館には理由を言って・・・」
それ以外に、何も言えなかった。
圭太が、平野芳香との昼食を終え、池田光子と池田商事総務部長吉田満にメールを打とうと、スマホを持った時だった。
池田光子から、着信があった。
「ごめんね、圭太君、ちょっとお話したいことが」
圭太は、焦った。
「いえ・・・こちらこそ、監査業務中でなかなか、申し訳ありません」
「総務部長吉田満さんからも、着信がありました」
池田光子は、声を落とした。
「吉田満が?」
圭太
「何か、ありました?」
「それとも、私に何か問題が?」
池田光子
「その前にね。池田聡が、脳梗塞で入院したの」
圭太は驚いた。
「あ・・・はい・・・大丈夫ですか?」
池田光子
「それでね、圭太君に迷惑をかけないよ」
「圭太君の気持ちも、律子さんの気持ちも知っているから」
「でも、一度、逢ってお話したいの」
「空いている時間はある?」
「週末は?」
圭太は、少し困ったけれど、正直に話す。
「空いていると言えば、今夜か、来週」
「週末は出かけます」
「どうしても緊急とあれば、キャンセルしますが」
池田光子の声が、明るくなった。
「今夜でいい、ありがとう、お迎えに行きます」
「私の実家でいいかな」
「それから週末は旅行?あ・・・聞いちゃった」
圭太も、少し笑う。(池田光子とは気が合う)
「はい、疲れているので、骨休めをと」
池田光子
「うん、聡もすぐに死ぬってことではないみたい」
「骨休めしていらっしゃい」
そこまで言って、少し笑った。
「彼女と?」
圭太は、否定する。
「まさか、まだまだで」
「考えたこともありません」
池田光子は、話題を変えた。
「吉田満には返信しなくていいよ」
「私から、重々言っておきます」(強めの声だった)
池田光子との電話を終え、圭太は考えた。
「会長が脳梗塞か」
「そうなると次期会長選任が必要」
「おそらく、今は、光子さんが臨時の会長代理」
「池田商事は、創業家から会長を出す決まり」
「光子さんは、嫁か・・・今後・・・」
「まあ、俺には関係ない」
圭太は、そのまま、午後の監査業務に入った。
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