第154話池田光子と吉田満 圭太と紀子は不祥事(可能性)を見抜く。
池田光子は、総務部長吉田満を厳しく見据えた。
「圭太君を取り戻す気なの?」
総務部長吉田満は、深く頷いた。
「会長からは、そのお気持ちを伺っております」
「圭太君の退職時からです」
「それ以前に、会長付秘書の人事から、会長はそのお気持ちと思われます」
池田光子は、圭太の気持ちを知っている。
「池田がどう考えようと、圭太君は来ないと思うよ」
総務部長吉田満は、困惑顏。
「そうは申されましても、池田商事は創業家以外からの会長はおりません」
「圭太君のお母様は、里子とお聞きしましたので」
「圭太君が戻ったとしても、大きな問題はないかと、他社でも、よくあるケースです」
池田光子は、夫聡の無神経な軽口に、本当に腹が立った。
(姑華代が、娘律子を捨てさせられたことを、里子などと軽々しく・・・)
(華代さんと律子さんの寂しさと苦しみを、何も理解してない無神経さにも)
「とにかく、もう少し、主人の様子を見ましょう」
「それから、圭太君については、あなたたちでは無理」
「圭太君は、あなたたちに、お母様の病状でさえ、相談できなかったの」
「それほど信頼がないの」
池田光子の強い口調に、総務部長吉田満は、深く頭を下げる以外、何もできなかった。
圭太は、通常の監査業務を行っている。(紀子と向かい合わせで、帳票確認)
紀子からのメールは、芳香と一旦離れて、第一監査部に入る直前、見た。
(紀子も文句を言わなかった)(とにかく圭太の役に立つことを優先した)
その圭太の顏が、厳しくなった。
「未収金が多過ぎるような」
「特に東南アジアの・・・例の国で」
紀子も、その帳票を見た。
「確かにそうね、回収できるのかな」
「確か、最近、デモとかテロも多い国」
圭太の顏は厳しいまま。
「デモとテロで回収が出来ないのは・・・想定済みで」
「尚、売りつける」
「ただ、この超大規模財閥系企業の未収金なので、全体から見れば目立たない」
「それを逆利用して、売りつける」
紀子
「でも、回収できない可能性を把握しながら、売り上げだけは、伸ばすのはどうか」
「営業成績は増加するよね」
「水増しとは言い切れないけれど・・・」
「回収できないのを把握しての売り込みは、会社への損害可能性を把握しているのだから、背任行為かな」
圭太は頷いた。
「それに東南アジア特有の、役人への賄賂が絡めば、もっと問題は大きい」
「この会社の役員が絡んでいれば、特別背任かな」
「大きな不祥事の一端かもしれない」
「経営者に対して、懸念を示しての報告案件になる」
「国際的な調査が必要かな、これも」
圭太と紀子の分析に、第一監査部部長鈴木と課長五十嵐も、納得した。
鈴木部長
「これ以上問題が大きくなる前に、措置をするべきと思うな」
五十嵐課長
「営業成績を重視過ぎ、株主総会対策かな」
会長室に入っての説明は圭太が行った。
圭太の説明に、会長杉村忠夫も専務高橋美津子も納得。
会長杉村忠夫が、監査対象の財閥会長に懸念を伝えることで、一旦解決となった。
圭太がホッとして会長室を出ると、スマホに着信が2件(マナーモードにしてあった)
池田光子と、池田商事総務部長吉田満からだった。
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