第142話池田華代の社葬 圭太は河合紀子を論破する。

池田華代の社葬は、3日後に、菩提寺の本門寺と決まった。

葬儀の細かな手配は、葬儀社の手慣れた担当者が総務部と打ち合わせ、問題なく進んだ。

圭太は、納骨後に、一人で墓参すると決めているので、通常の仕事をして過ごすだけだった。


社葬当日は、会長杉村忠夫と専務高橋美津子が参列。

午前中の社葬だったので、午後には帰って来た。


専務高橋美津子は、午後3時に、監査業務中の圭太を呼び出した。

「圭太君、終わりました」

圭太は表情を変えない。

「お疲れ様でした」

専務高橋美津子は苦笑。

「受付は、池田商事の社員より、葬儀社の人の方が多かったかな」

「池田商事も忙しいのかな」

「ほぼ、業者任せみたい」

圭太は、コメントに苦労した。

「プロに任せた方が無難です」(もし、自分が池田商事にいても、受付は山本美紀には、任せられない、間違いを起こして泣くだけ)(間違いの始末と、美紀のご機嫌取りで疲れ切ってしまう)


専務高橋美津子の顏が真面目になった。

「池田聡さん、かなり緊張していたのかな、顏が赤いの」

「立ち上がって歩く時、足が少しもつれて、転びそうに」

圭太は、冷静に返す。

「血圧が高い、あくまでも噂です」

「足のもつれは、よくわかりません」

「そもそも、辞めた会社なので、コメントは控えます」


専務高橋美津子は、笑顔。

「ここに来て、よかった?」

「私たちは、助かっているよ」

「圭太君の指摘で政治家にも官僚にも、大財閥にも、恩を売れたから」   

圭太も笑顔。

「はい、やはり天職かなと」


専務高橋美津子は、笑顔で続けた。

「今日、同席した築地商会の岡田社長が喜んでいてね、また来て欲しいって」

「財務部長で迎えたいとも」

「今、監査している財閥系の会社の役員とも同席して、圭太君と話したいとか」

「渡しません、と言い切ったわよ」

圭太は、やわらかく笑った。

「そろそろ、監査に戻ります」

「河合紀子が、切れそうなので」


専務高橋美津子は、その言葉に興味を持った。

「何で切れるの?」

圭太は、プッと笑う。

「宣伝広告費が、おかしいとか」

「美少女アイドルを選ぶ際に、使い過ぎとか」

「水着の露出まで、文句を言っています」


専務高橋美津子は圭太の背中をポンと叩いた。

「行ってなだめて、紀子さん、アイドル嫌いなの」

「何故かは知らないよ・・・女性差別がどうとか言うし」



第一監査部に圭太が戻ると、河合紀子の機嫌は、ますます悪くなっていた。  

圭太の顏を見て、絡んで来た。

「ねえ・・・この広告費、よくないと思わない?」

圭太は、請求書と領収書を突合。

「金額はそれほどでもなく、請求書と領収書の金額も間違いないよ」


しかし、河合紀子の視点は別。

「そういう表面的なことでなくて!」(この時点で怒っている)

「このアイドルグループの女の子たちCM・・・水着ばかり」

「胸とお尻と足ばかり強調して、アングルも危険」

「絶対に苦情が来るよ、セクハラとか、そういう人権団体から」


圭太は、冷静。

「そういう苦情はないよ」

「全部見たから」


河合紀子は、また顏を赤くする。

(圭太は、苦情報告書を読んでいた、圭太は正確を知っているから)

でも、圭太に言い負かされたくなかった。

「将来的に、絶対あると思うの!だから注意するべきと思うの」


しかし、圭太は、ここでも冷静に返す。

「監査指摘は、確たる証拠に基づいて行うべき」

「苦情が一件も確認されない状態で、監査士個人の、私的な意見からの指摘は控えるべきでは?」


河合紀子は、真っ赤な顏で黙ってしまった。(また、圭太に論破され、放心状態)

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