第133話圭太と紀子の夜(3)美由紀の思い

私、真島美由紀にとって、圭太は可愛くて頼りになる後輩。

決して「弟フェチ」ではないけれど、学生(ゼミ)時代の圭太は、一つ一つの言葉が面白かった。


圭太は、少々クールな表現(切り捨てるような言い方)をする。


「僕には興味ありません、他をあたってください」

「美由紀さんの発言、無意味です」

「計算間違えています、困らせないでください」

「身体押し付け過ぎ、匂いもキツくて、身体離してください」」

「そんなにスカート短くしてどうするんです?わかっています?」


そんなことを言って、シレッとフォローの言葉やら何やらが入るのが、実に小憎らしいのだ。


「他に相手がいないんです?フラれたんですか?仕方ない、お供して差し上げます」

「適当に聞きかじったことを言わないで欲しいんです、正解は知っています、教科書のこのページです、よく覚えておいてください」

「間違った計算は直しました、世話やかせる人ですね、教授には内緒にしますから」

「最近、豊満自慢です?レモン系ですよね、美由紀さん、そのままで魅力あります、年下を誘惑しないで欲しいかな」

「ゼミに参加するんです、勉強したいのに僕の目のやり場がない・・・きれいな脚とは思いますよ」


河合紀子が、圭太に好意を寄せているのは、学生時代からわかっていた。

圭太に全くその気がないことも知っていたから、よく「邪魔」をしかけたものだ。


・「圭太に買い物の荷物持ち」をさせながら「映画館デート」は、何度も。(真面目な顏で、映画の講釈をするから面白い、言わせてあげた)

・紀子が圭太と学食にいると、割り込んだ。(圭太は顏を変えない、紀子の嫉妬顔が最高)

・圭太が公認会計士受験の前は、独占した。(家に連れ込んで缶詰)(紀子には内緒)


が・・・今、目の前の圭太は、そんな学生時代の可愛い圭太ではない。

もう、骸骨のように痩せて・・・何とかしてあげたい。

親父もそれを理解したのか、カロリー高めの料理を出す。

「大き目の鶏の唐揚げ」「肉じゃが」「揚げ出し豆腐」(圭太も懸命に食べていた)


さて、圭太は、ビールは、2杯でやめた。(お会計もしたいらしい)

「明日も監査業務、そろそろ」

紀子は、私に圭太を独占されていたので、ホッとした顔。(顏に出過ぎ、まだまだ子供)


ただ、私は、そんな簡単に圭太を帰したくない。(それと、紀子と帰るのが、気にいらない)

「圭太君、少し相談があるの」

「今度、帳簿を見て欲しいなと」(圭太の経営分析は、鋭いから)(親父も母も笑顔、つまり期待している)


圭太は、素直に頷いた。

「わかりました、飲んでいない状態で」

「また、都合のいい時に」(紀子のアセリ顏が快感)


会計は「大負け」にして、二人を帰した。

少し見送っていると、紀子が身体(胸かも)をぶつけるように、圭太の腕を組む。


母美智代も、見送りに出て来た。

「圭太君は、紀子さんとどうなの?」


私は、思うままを言った。

「圭太は、紀子に合わせているだけ」

「その気はないよ」

「恋愛どころでなかったが本音」


母美智代も頷く。

「そうだろうね、病人を一人で抱えるって、大変」

「しかも末期ガンで、いつどうなるかわからない」

「仕事をしながらだもの」


私は、それでも紀子をフォローした。

「紀子なら、いいかも」

「私だと、圭太は引き気味で本音を言わない」

「圭太と紀子なら、気取らない深い夫婦になれる」


母美智代は、私の顏を見た。

「あまり邪魔しないこと」

「圭太君が可愛いのはわかるよ」


母美智代の言葉に、少し間があった。

「先代が、圭太君のお祖父さん圭三さんのお世話になってね」

「それで、この店ができたの」

「だから、元気がない圭太君は、困るの」

(母美智代は、かなり潤んでいた)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る