第117話法事当日
圭太は翌金曜日の監査は穏便に済ませた。(穏便に済むような点検だけに限定した)(定時で退社、そのままマンションに帰宅を優先した)(当然、日曜日の法事のため、余計な問題を発掘したくなかった)
土曜日は、法事の確認を、寺や葬儀社と行った。(事前打ち合わせより、出席者が増えるので、お返しの量を増やす等のこと)
(食事は、コンビニ食、外食する気にはならなかった)
(河合紀子が、マンションに来たいと言ったけれど、不要と断った)
日曜日、法事当日になった。
葬儀社の年輩の担当者(ネームプレートは鈴木)が迎えに来た。(供物は寺にセット済みとのこと)
寺に持って行く物(白木の位牌、塗りの位牌等の仏具)(お返しは車に積んであるとのこと)を確認してもらい、葬儀社の車で、寺に向かう。
圭太は、葬儀社の鈴木担当者に感謝の言葉。
「本葬の時には、一人で直葬でしたが、四十九日で増えてしまいました」
鈴木担当者は、落ち着いた返事。
「お母さまのご人徳です、それと圭太様への思いでしょう」
寺に着くと、河合紀子が既に着いて待っていた。
圭太は、深く頭を下げた。
「河合さん、ありがとうございます」
「本日は、よろしくお願いします」
河合紀子は、神妙な顔。
「すごく立派なお寺ね、緊張して来た」
寺の受付で、法事のためのお布施を、若い寺僧に渡し、圭太は本堂の入り口に立った。(出席者に、感謝のお辞儀をするため)
実際、出席者は多かった。
母の勤めていた税理士事務所の高橋所長以下職員が全員(10人)
圭太の勤める銀座監査法人からは、会長杉村忠夫、専務高橋美津子、手伝いを申し出た河合紀子、佐藤由紀は一家なので3人(計6人)
平野芳香も一家で3人。
池田商事関係では、会長の池田聡と光子、予想外で総務部長吉田満と人事部長宮崎保、人事部の山田加奈と総務部の山本美紀と佐藤絵里の姿があったこと。(計7人)
圭太は、一人一人に挨拶をしながら、信じられない気持ちもある。
(母さんの人徳はわかる、でも、この馬鹿息子に人徳などない)
(税理士事務所は、わかりやすい)
(銀座監査法人と平野芳香は、まだ理解できる)
(しかし、池田商事は多過ぎるな、もう辞めた会社なのに)
法事の読経は、滞りなく進んだ。
焼香が全員終わり、圭太は、挨拶を促され、マイクを持った。
定番の挨拶にしようと思ったけれど、少し変えた。
「本日は、母律子の四十九日の法要に、これほどの多数のお方に御参加を賜り、誠にありがとうございます」
「母律子も、心強く、浄土へ旅立てると思います」
「母の一生の中で、様々なご縁があり、様々にお世話をいただきました」
「母も、本当に感謝していると思います」
ここで、池田聡と池田光子の潤んだ目が気になったけれど、そのまま続けた。
「今後も、母を時々は思い出して欲しい、切に、お願いします」
「それが、浄土で生きる母の力になります」
税理士事務所の面々は、ここで、全員が泣いている。
(圭太も、珍しく潤みそうになるが、こらえた)
圭太は、声を大きめに、深くお辞儀。
「本日は、本当にありがとうございました」
圭太の挨拶が終わり、河合紀子が手伝い、全員にお返しを配った。
不思議なのは、全員が、帰らないこと。
その圭太に、専務高橋美津子がそっと耳打ち。
「圭太君、みんなお墓参りをしたいようなの」
圭太は、珍しく慌てた。(全く予定外、予想外で準備をしていなかった)
慌てる圭太を、河合紀子、佐藤由紀、平野芳香が救った。(協力して、タクシーを手配した)
結局、参列者全員で墓参。(谷中)
(線香の手配も、河合紀子、佐藤由紀、平野芳香が自発的に協力、無事に済んだ)
圭太はお礼の挨拶を墓の前でも、するしかなかった。
(二回目は、定番になってしまった)
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