第106話平野芳香のスパート③

圭太は、冷静に平野芳香に言葉をかけた。

「落ち着いて、芳香さん」


芳香は、自分の興奮を恥じてはいない。

「身動きできます?圭太さん」(圭太に対して征服感もある)


圭太は、少し笑った。(クスッと、遊んでいるような顔)

「全然無理、柔道とかレスリングの抑え込みみたい」


芳香は、その反応に笑ってしまった。

「一本勝ちですね、私の」


圭太が頷いたので、ようやく身体を離した。

「名残惜しい圭太さんの身体ですが」


圭太は、身体を起こした。

芳香は、再び圭太に身を寄せる。(少し冷静さを取り戻す)

「あの・・・重かったとか?」(最近、太った自覚がある)


圭太は、それには反応しない。

「感じなかった、驚いて」


芳香は、ホッとした。(ようやく暴走を自覚したから)

「なんか・・・圭太さんと、こうしていると安心します」

「受け止めてくれる人、好きです」(好き、という言葉にためらいがない)


圭太は、やさしく笑う。(怒ってトラブルにしたくなかった)

「芳香さんには、かなわない」

芳香も笑う。

「圭太さん、弱過ぎでした」(そのまま、圭太を横抱きにする)


圭太は芳香の腕を拒まない。

「もしかして、悩みごとでも?」

芳香は、自分の身体を預けた。

「悩み・・・仕事は・・・勉強ばかりで・・・」


圭太は芳香の背中を撫でた。

「でも、司法試験受かるんだから、優秀だよ」

芳香の腕の力が強くなった。

「実務が難しくて・・・怒られることも多いんです」

「すごく細かい上司がいて」


圭太は、そんな芳香が可愛く感じた。

「怒られるのも経験、それで育つ」

「嫌な上司で細かいほうが、本当は親切」

「芳香さんと顧客のためだよ」

芳香

「愚痴を聞いてくれてうれしいです」

「ますます、好きです」


圭太はプッと吹く。

「さっきは、怒られ、叱られ、一本取られた」

芳香

「それは、圭太さんが悪いんです」

「ゴチャゴチャ変なことを言うから」

圭太は面倒になって来た。

「心配事とか、悩み事があれば、聞ける範囲で聞く」

「たいした返事はできない、それでもよければ」


芳香は、圭太の顏をじっと見た。(また、真っ赤な顔になった)

「あの・・・キスしていいですか?」(これがスパートの最終目的だった)

「いきなり・・・かな」


圭太は、考えている。

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