第100話圭太の二夜連続デートの理由
私、河合紀子は、「呆れて物が言えない」と、言うより不思議だった。
圭太が、今日は、「因縁の平野芳香」とのデート、そして明日は「興味がないと言い切った、佐藤由紀」との連夜のデートを引き受けたことが。
どう考えても、圭太は、そんなことをする「軽い男」ではない。(むしろ、嫌いなタイプである)
だから、聞いてみた。(まるで、フラレ女の何とかみたいで、悔しかったけれど)
そうしたら、その疑問は、あっさり氷解した。
圭太いわく
「日曜日に、母の四十九日の法事がある」
「佐藤由紀の母の芳子さんは、母と親しかったから、出席する旨、連絡して来た」
「同じように母と懇意だった平野芳香も、法事の日を知っている、出席したいと」
「だから、母の法事で、変なことになりたくない」
「・・・まあ、施主としてかな」
「仏さんになると言うのに、わだかまりは見せたくない」
だったのである。(また強めに聞いてしまって、私は反省した)
「ごめん、嫉妬した」(つい、本音そのものだ)
圭太は苦笑い。
「本葬より、四十九日の法事のほうが出席者が多い」
「施主は、挨拶するんだよな」
「文面を考えないとなあ・・・結局平凡、定番になるとしても」
「お返しを増やさないと」
「他の関係者も増えて来ているんだ」
「母さんは、驚くのかな、喜ぶのかな」
「あの・・・私は?」(そんなことより、あの二人の女には、負けたくなかった)
圭太は首を横に振った。
「特にいいよ、母さんを知らないだろ?」
「塔婆持って墓まで行くし、終わるまで時間かかる」
私は、粘った。
「勝手に私が行くのは?職場の同僚代表で」(もう、必死だった)
「あいさつして、お返し配って忙しいでしょ?」
「圭太君のお手伝いする、いいでしょ?」(平野芳香と佐藤由紀には、お手伝いさせたくないし・・・)
圭太は、苦笑い。
「施主としては、ありがたいかな」
「アルバイト料出すよ」
「お返しも、ほぼ世間並み、食事は出ないよ」
私は、首を横に振った。
「そんな、アルバイト料なんて、怒るよ」
「私が勝手に出て、勝手にお手伝いしたいの、それだけ」(ここでも、本音しか口に出ない)
圭太は、「うん」と、素直に頷いた。(昔の圭太顏だ、うれしかった)
廊下の椅子に座っての話、その話が耳に入ったようだ。
専務の高橋美津子が、私の肩をトンと叩いた。
「私も、行くから、河合さんも、一緒に」
「律子さんとは、同じ職場、税務署でしたから」
圭太は、「ありがとうございます」と、深く頭を下げている。
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