第60話佐藤由紀の猛アタック 圭太は結局能面に

残念ながら、圭太は大盛りスープ炒飯の完食はできなかった。(およそ60%で断念)(尚、佐藤由紀は、立派に完食を果たした)


店を出た佐藤由紀は、得意満面。

「私の勝ちです」

「圭太さんに、やっと勝てました」

「言うこと、聞いてもらいますよ」


圭太は、佐藤由紀から、身体を少し離す。

「勝ち負けとか」

「言うことを聞くとか、それ何?」

「そんな約束していないぞ」


しかし、佐藤由紀は、身体をぶつけるように、圭太に近寄る。

「うるさいです、圭太さん」

「素直に負けを認めなさい」


圭太は、困った。

人も多く歩いている。

こんな場所でトラブルも恥ずかしい。

「で、佐藤さん、何をすればいいの?」


佐藤由紀は、口を尖らせて指摘。

「ほら、まず名前で呼びなさい!」

圭太は、仕方ないと思った。

「わかりました、由紀さん」


佐藤由紀は顏を赤くする。

「由紀にしてください、二人きりの時は」

圭太は、それで由紀の用件は済んだ、と思った。


しかし、そうではなかった。

佐藤由紀

「あの!まず一つは」

圭太は、背中がゾクッとした。

「名前呼びだけでないの?」

佐藤由紀は胸を張った。

「それは、当然で、用件に入りません」

「これから、夕飯は一緒ですから、ご覚悟を」

「いいですか?負けたんです、圭太さん」


圭太は、走って逃げたくなった。

「自由がない、俺にも由紀にも」

佐藤由紀は、その名前呼びに、胸が熱くなった。

「やればできるじゃないですか!圭太さん」

「で、夕飯は決定、両親公認で、母の厳命です」


圭太は、頭を抱えた。

「親まで巻き込んでいるって・・・子供?」

佐藤由紀は、ニコニコ顏。

「もう一つは、週末を空けてください」

「今回は、そこまでにしますから」


圭太は、また困った。

「自由がない」

「それに今回はって何?」

「何の用事?」

佐藤由紀は、突然、大股に歩き出す。

「言いません、圭太さん文句言うでしょ?」

「だから、文句許しませんから」


黙り込む圭太に、佐藤由紀は、追い打ちをかけて来た。

「無視したり、他人行儀したり・・・」

「いろいろと、苛めてくれましたよね」

「何度も泣いたんです、圭太さんのおかげで」

「仕返ししないと、気がおさまりません」


圭太は、抗弁した。

「俺、悪気は無いよ」

「由紀が勝手に、落ち込んで」


佐藤由紀は、目が潤んだ。

「あの!憧れの圭太さんなんです!」

「私を嫌わないでください」

「それとも、他に好きな人が?」

「あの、池田商事のきれいな人?」


圭太は、興奮気味の佐藤由紀を手で押さえた。

「何もわかっていないのは、貴方のほうです」

「恋も愛も無い生活で、ただ、生きているだけだから」


佐藤由紀は、顏が真っ赤。

圭太は、いつもの能面に戻っている。

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