第57話圭太と池田聡④
池田聡は、圭太の予想以上に、頑固だった。
「俺も、母さんも、そうしてもらわないと困る」
「後は、節税策でも、考えてくれ」
圭太は、非対応。
つまり、この問題を棚上げることにした。
「今日聞いた話、しかも重要な話」
「受け取りはできない話になりますが、また改めて、の話にさせていただきます」
「今日に今日、の話でもないと思うので」
池田聡も頷いた。
「圭太君の納得するようにして欲しい、活用してくれ」
圭太は、これで池田聡は、帰ると思った。
用件も全て終わったと考えた。
しかし、帰らなかった。
池田聡は、話題を変えて来た。
「なあ、圭太君、監査士として」
圭太は、「監査士として」になると、「はい」と対応するしかない。
池田聡
「我が社に問題点が、数点ある」
圭太は、黙っている。
池田聡の「見解」を先に聴こうと思う。
池田聡。
「事務の乱れ、それは圭太君も理解していると思う」
「高橋美津子さんから、聞いたかな」
「恥ずかしい、圭太君にも迷惑を掛けて来た問題だ」
圭太は言葉を選ぶ。
「大したことは・・・事務の基本に戻ればいいことなので」
池田聡は、「うん」と深く頷く。
そして続けた。
「経営的には、黒字拡大している」
「そこで、新事業も考えている」
「少し耳に入っていたかもしれない」
圭太は、思い出した。
池田商事は、文化事業(映画、講演会、コンサート)への取組計画を検討していた。
ただ、総務部なので、担当者ではなかった。
圭太自身は、あまり感心できる計画とは、思っていなかった。
池田聡は、圭太の顏を覗き込んで来た。
「なあ、この問題、どう、思う?」
圭太は返事に苦慮した。
「池田商事で考えればいい」と思うし、「監査士」として正式に監査料を貰っているわけでもない。
しかし、黙っているのも、会長に酷と思った。
「一般的に文化事業は、安定性に欠きます」
「理由は、文化人は気まぐれな人が多い、そのお世話だけでも苦労しますよ」
「企画が上手く当たればいいけれど、現実は、厳しい場合も多いのでは?」
「他の会社の情報をもっと取って、慎重に検討するべき」
「うーん」と考え込む池田聡に、もう一言かけた。
「今は、それを考える時期ですか?」
「足元を固める時期なのでは?おこがましいですが」
池田聡は、頷いた。
「当たり前だよな」
「日々の締めも、合わせられないのに」
「会社として、足元を固めることのほうが、先だ」
圭太は、池田聡と、少しずつ話が合うようになっている。
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