第42話祖母?池田華代からの手紙 圭太は困惑

池田華代からの手紙は、多かった(二十通以上、概ね年に一度らしい)。

圭太が手に取ったのは、母律子が入院する前の、去年の4月のもの。


内容としては、

「時候の挨拶、桜の話に続いて、律子の健康状態への心配」

驚いたのは

「圭太君は、真面目に働いている」の表現。


圭太は、「何故、そうなる」が不明。

つまり、池田商事の会長池田聡の母華代と、自分の母律子が「知人」なことが理解できない。

その上、「圭太君は真面目に働いている」となると、自分について池田華代が知っていて、母律子が手紙にしても、連絡の対象としていたことになる。


母律子の旧姓も、理解できない原因。

「母さんの旧姓は、里中だった」

「池田と里中・・・何の関係か?」

しかし、どれだけ考えても、わからない。


わかったのは、池田佳代と里中(母の旧姓)律子が、理由は不明ではあるが、知人の関係にあったこと、その知人の関係の手紙のやり取りの中で、圭太が話題となっていたこと。

そこまで考えて、圭太は、一番古い日付の手紙を見た。


また、理解できない文面から始まった。

「母さんは、生活費の受け取りを拒否したらしい」

「池田華代は、それを嘆いている」

「しかし、池田華代が何故、生活費を?」

読み進めて、また驚いた。

「孫の写真を送ってくれてありがとう?」

「いつか圭太君に逢える日を楽しみにしています」


圭太は、手紙を机の上に置き、ソファに横になった。

とにかく動揺、混乱している。

「マジか?」

「手紙が事実なら、池田華代が、俺の祖母?」

「しかし、母の実家は里中」

「田中圭太は、池田会長のお宅に行ったことはない」

「もちろん、池田華代の顔も見たことはない」


池田商事時代の、問題となった人事を思い出した。

「俺は、母さんの不安で、人事異動を拒否した」

「個人的に過ぎると思い、母さんの病状は言わなかった」

「それが人事異動を拒否、その責任を取って、池田商事を辞めた」

「ただ・・・それ以外に、何故、俺が会長付秘書なのか、それもわからなかった」

「中堅とは言え、池田商事の会長付秘書は、出世コース」

「そもそも、俺のような地味な人間には似合わない」

「ただ・・・会長池田聡が池田華代から聞いて、俺が孫、血縁となれば、話は変わって来る」


しかし、また混乱する。

「祖母華代は池田」

「母律子は旧姓里中」

「俺は田中・・・池田華代と里中律子に何があったかがわからない」


圭太は、ソファから起きて、水を飲む。

少し冷静に戻った。

「俺は、池田商事を辞めた」

「だから、池田華代と接触を持つべきではない」

「孫も何も、会ったことのない人」

「母さんも、生活費の受け取りを拒否していた」

「まずは、相続を完璧に果たすべき」


圭太は、池田華代の手紙を、手紙箱にしまい込んだ。

「もはや、見る必要もない」

「シュレッダーにかけてもいい」


そう思ったけれど、決断ができなかった。

「母さんが大切に保管してあった手紙だ」

「四十九日の法事の後でも、坊主に焼いてもらうか」

しかし、それもしないことにした。

「手紙焼くだけでも、布施を何万も取られる」

「無駄の極みだ」


時計を見ると、午後11時を過ぎている。

空腹を感じたので、エネルギーゼリーを飲んだ。

スマホに佐藤由紀からのメッセージが入っていたけれど、読まなかった。

ベッドに入り、そのまま眠ってしまった。


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