第39話由紀の目覚め 圭太と母芳子の関係

由紀が目覚めたのは、意外に早く午後9時。(圭太はリビングにいた)

由紀は、顔を真っ赤にして、圭太のベッドから抜け出た。

「やってしまった・・・」と反省、そのままリビングにいる圭太に近寄った。


次に出す言葉も、実に恥ずかしい。

「あの・・・トイレを」(尿意で、おなかがパンパンだった)

圭太に「あそこ」と言われて、用を足す。(恥ずかしくて仕方がない、まるで子供みたいなので)(でもトイレのピカピカに驚く、さすが圭太さんと感心する)


リビングに戻ると圭太が珈琲を準備してあった。

「飲んだら送るよ」(この言葉も、実にやさしい)


「あの・・・圭太さん、ごめんなさい、酔いました」(ようやく謝りの言葉、それも顔から火が出るほど恥ずかしい)


圭太は、いつもの無表情。

「やけどしないように」(また、子供扱い?と思うけれど、文句が言えない)


由紀は一口飲んで、殊勝な言葉。

「美味しいです、圭太さん」

「あの・・・ありがとうございます」


由紀が珈琲を飲み終えた時点で、圭太はタクシーを呼んだ。

圭太

「一人で帰ることができる?」

由紀は、甘えた。

「あの・・・家まででは?」

圭太は苦笑い。

「わかった、そうする」


月島と深川の距離なので、10分もかからず、由紀の家に着いた。

圭太は言葉が短い。

「おやすみ」

由紀は、少し寂しい。

「はい・・・ご迷惑おかけしました」

それでも、家から母芳子が顏を出している。

タクシーを降りて、家に入った。


やはり、母芳子の尋問にあった。

「由紀、酒が匂い過ぎます、どこに?」

由紀は、母に逆らえない。(逆らった方が面倒)

「月島のおでん屋さんで」

母芳子は鋭い質問。

「相手は?さっき男の人がタクシーに乗っていたね」

由紀は、目を閉じて答えた。

「同じ銀座監査法人の同僚で」

「田中圭太さん、日比谷高校の一年先輩」

「月島に住んでいる」(とても圭太のアパートで寝た、までは言えない)


母芳子に、少し間があった。

「日比谷高校で・・・月島で・・・田中圭太さん?」

由紀

「うん、そうだよ」

母芳子

「もしかして・・・お母さんは・・・律子さん?」

由紀は驚いた。

「何で知っているの?」

母芳子

「知っているも何も・・・同じ女子校で同級生、しかも同じ女子大ですもの」

「税務署に入って、その後月島の税理事務所に」

「以前は、杉並にいたよ、引っ越して来た」

「こことは近いし、時々、逢っていたの、実は」


由紀は、声を落とした。

「最近、お亡くなりになったらしい」

母芳子の顔が変わった。

「え?嫌!」

「じゃあ・・・圭太君は、一人きりなの?」


由紀は、母芳子が「圭太君」と親し気に言う理由が不明。

「何で、圭太さんを知っているの?、会ったことがあるの?」

母芳子は、目を細めた。

「うん、知っているよ、月島のマンションに遊びに行ったの」

「彼が大学生の頃かな、なかなかハンサムな子で」

「珈琲を淹れてくれて、自家製のクッキーまで」

「すごくやさしくて、お話も上手な子」


由紀は、身体の力が抜けた。

「今は、絶食気味に細くて」

「仕事は厳しい、女性にも厳しい、でもやさしい時もある」(圭太に酒乱を見られたので、文句が言い辛い)


母芳子は、由紀を置き去りにして、固定電話をかけている。

「圭太君?」と聞こえて来たので、由紀は固まってしまった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る