第38話由紀は圭太に絡み、泥酔する
佐藤由紀は、圭太に絡みたくて仕方がなかった。
「本当に氷ですね、気に入らない!」
圭太は受け流す。
「それがどうした?その氷と何で酒を飲む?」
由紀の顔が赤くなった。
「もう、その言い方、直しなさいよ!」
「圭太さんの指導役として、命令します」
圭太は、面倒になって来た。
「指導役は、やめてもいいよ」
「専務にも言うから」
由紀は、圭太の足を蹴飛ばした。
「監査の指導ではなくて、生活指導も言われています」
圭太は、ますます疲れて来た。
「お前、酔っているぞ、酷く」
「タクシーは呼ぶけど、その前に顔洗った方がいい」
由紀は、また圭太の足を蹴る。
「私も若い娘です、顔が何とか、酷いじゃないですか!」
「それと、質問です」
「この前、銀座で見た人は、彼女さん?元カノさん?」
「あんな言い方、酷いです」
「それ、すごく気になります」
圭太は、まともには答えない。
「いや、どうでもいいだろ」
「お枚に何の関係がある?」
由紀は、また酒を煽る。
「言いなさいよ!この氷男!」
「あれは・・・酷い・・・私にも酷いけど」
「あのきれいな人のほうが、圭太さんより、まじめ」
「まじめな告白を、どうして、あんな風に?」
圭太が答えないでいると、由紀は。また酒を煽って大声を出す。
「あーーーー!もう!この人は!」
圭太は、そのどうしようもない酒酔い女を冷静に諭した。
「それよりお前、その真っ赤な顔で帰れないぞ」
「若い娘がそんなに酔った顔・・・俺が親なら叱る」
「鏡で見たほうがいい、その顔、親に顔見せられるのか?」
そこまで言われて、由紀は、鏡で自分の顔を見た。
そして、動揺した。
「あ・・・酷い・・・」
また圭太の足を蹴る。
「圭太さんが、悪いんです」
「飲ませ過ぎです、この悪魔が」
由紀は、本当に身体もふらついて来たので、圭太は困った。
「お前、自制心とか、ないの?」
「自分で、グビグビ飲んでおいて、俺のせいなの?」
もう、どうにもならないので、圭太は由紀を抱えて、おでん屋を出た。
「少し夜風に当たれ」
確かに、まだ寒い時期なので、それで酔いも多少は醒めると思った。
しかし、由紀は圭太に腕を絡ませたまま、離そうとはしない。
「圭太さん・・・」
「もう、眠いです」
「寝かせて欲しいです」
「早く・・・もうダメ・・・」
「トイレも行きたい」
圭太は、タクシーで帰せる状態ではないと判断した。
由紀が歩けそうにないので、背負って、自分のマンションに入った。
そのまま、圭太のベッドにおろすと、由紀はスヤスヤと寝息を立てている。
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