第14話前人事部長(現総務部長)吉田満からの情報
総務部長吉田満と人事部長宮崎保は、別室に入り、内鍵を閉めた。
さて、総務部長吉田満は3年前の人事部長。
だから田中圭太が池田商事の入社試験時の、経緯を知っている。
「宮崎君、田中圭太は、会長がどうしても、と欲しがったんだ」
「確かに、彼の公認会計士の資格は、魅力だ」
「でもな、地味で目立つことを嫌うタイプ」
「俺は、欲しいとは思わなかった」
「どちらかと言うと明るい営業タイプが欲しかったから」
「まあ、それでも、会長の意向通りに、入れて見たら、確かに仕事はできて、助けられる部分が多かった」
「今は、圭太君がいないから苦労はしているが」
現人事部長宮崎保は、前人事部長(現総務部長)吉田満に迫った。
「とにかく会長は、今回の人事からして、田中圭太を会長付秘書にまで引き上げて」
「それで、エースの鈴木亮が、へそを曲げて事件を起こした」
「会長が悪いとは言わんが」
「そもそも、会長は何故、そこまで圭太君を欲しがる?」
「それがわからんのだよ、お前、知っているか?」
総務部長吉田満は、声を小さくした。
「去年、会長と飲んだ時にな・・・」
「・・・圭太君の・・・ことを言ったんだよ」
「彼は、子供の頃に杉並にいたとか」
「どうやら・・・圭太君のじいさんに、会長が命を助けられたとか、世話になったとか何とか」
「具体的には言わなかったけれど」
「その後、杉並からいなくなった圭太君一家を探していたとか」
「そんなことも言ったな、何故探したのかは、言わなかった」
「要するに、昔、何かあったのかもなあ」
人事部長宮崎保は、ため息をつく。
「縁故採用を嫌う会長が・・・」
「自分が命を助けられたとか何とかで?」
「でも、圭太君ほどの人が、何故、一度は池田商事に入ったのか・・・」
「それも、わからない」
総務部長吉田満も苦しそうな顔。
「今さら仕方ない、圭太君は、特別功労金出して離職だ」
「・・・まあ・・・鈴木亮の懲戒解雇もあるしなあ・・・」
「我が社は大混乱、どうなることやらだ」
人事部長宮崎保
「それもそうだけど、総務は、今、かなり苦しんでいるらしいな」
「毎日締めが合わなくて、残業続きとか」
総務部長吉田満は苦笑い。
「圭太が欲しいな・・・」
「本当に、ミス入力を発見するのが速い」
「それと、修正も完全、正確無比」
人事部長宮崎保は、冗談でも「圭太を頼る」総務部長吉田満を、実に情けないと感じている。
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