第2話美紀と絵里は、田中圭太を評価しあう仲。

会社のある丸の内にほど近い、静か目の小料理屋。

山本美紀と佐藤絵里の前には、ビールと焼き鳥、肉豆腐など。


「まあ、落ち込むよね」

佐藤絵里は、山本美紀を慰める。


「悪い人、冷たい人ではないと思うの」

山本美紀は、ビールを一口飲む。


「地味なタイプ、口数も少ない」

「でも、仕事はできる、さすが公認会計士の資格持ちだ」

佐藤絵里も、田中圭太への評価は高いようだ。


「他に狙っている女もいるのかな」

美紀は、絵里の顔をじっと見る。


「落とした人勝ちよ、それは」

絵里も、美紀の目をしっかりと見返す。


「でもさぁ・・・」

美紀は、深いため息。


「うん、わかる・・・完全5時退社を貫くよね」

「係長も課長も、圭太さんには、何も言えない」

「評価も高いよ、圭太君がいるから、総務が締まる、会社も締まるとか」

絵里は、上司の対応まで口にした。


「何か理由があるのかな」

「一度くらいは、お礼したいもの」

「男女がどうのこうの・・・でなくてね」

美紀は、ビールを飲み干してしまった。


「気持ちはわかるよ」

絵里は、美紀の好きな日本酒の冷酒を頼み、グラスに注ぐ。

「仕事以外の話を圭太さんと」

「でもさ、どんな話になるのやら」


美紀は、冷酒をグラス半分程飲む。

話題も変えた。

「絶対、鈴木亮とは飲みたくない」

「今日は、ありがとう」


絵里も、冷酒を同じくらい飲む。

「うん、自称我が社のエースね、イケメンを誇り、実績も誇り」

「将来の幹部候補生と、部長に言われたことも誇り」

「それを武器に、口説き放題」

「それに乗る馬鹿な女は、遊ばれ放題、捨てられ放題」


美紀は、その絵里に流し目。

「絵里も、二か月前くらいに・・・」

「おカタイ絵里にねえ・・・」


絵里はムッとした顔。

「あれは違うよ、自称エースが、経費を誤魔化そうとしたから、注意したの」

「そうしたら、あの口調で、ナヨナヨと迫って来たの」

「嫌だから、完全キャンセルしたよ・・・って、美紀、知っているでしょ?」


美紀は、絵里の反発が面白い。

そして、黒ぶちの眼鏡をはずした絵里を、マジマジと見る。

「ねえ・・・絵里、黒ぶちの眼鏡、やめたら?」

「今の顔のほうが、可愛い」

「うん・・・まだ美少女の面影を残している」


絵里は、顔を赤らめた。

「嫌よ、恥ずかしい」

「私は、地味な女なの」

「それが好きなの」

そのまま、また黒ぶちの眼鏡をかける。


その後は、たいした話には進まない。

二人して、焼き鳥と肉豆腐を食べるだけの、23歳の女でしかなかった。

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