ご褒美
「ママ、みて、ほら! やっとごーれむさんにかったよ!」
「おお、やったではないかウルちゃん!」
ただいまの時刻は昼前。
ついに
「ごーれむさんがね、こうきたからね、こうよけてね、でね、そのすきにうでをのぼって、こうやってみずふうせんをね、ぱんってわったの!!」
水で濡れた
其の様はまるで小躍りでもしてるようで、とても愛らしい。
「そうかそうか、頑張ったな! じゃあ妾も約束を守らねばならないな。――――明日はピクニックに決定だ!」
「わーい! ぴくにっくぴくにっく!! ぬしをつりあげるのっ!!!」
なぜこんな話になっているのか。それはある日の夕食時のことだった――――
◆
「あれれ、これははじめてみるたべものだね?」
テーブルに並べられた夕食の、とある一皿を見てウルティナの箸が止まった。
「む? そうか、魚を出すのは初めてだったか」
「さかな……さかな…………、あっ、ウルしってる! さかなさんはおみずのなかでくらしてるんだよね?」
きっと本で見たのだろう。最近ではエリーシャが教えていないようなことも本で見た知識として知っていたりする。
「よくわかったな、正解だ。こいつは数年に一度しか捕れない珍しい魚なんだ。普段は湖の下の方に潜っているんだが、この前湖の周囲を歩いていたらたまたま水面で見かけてな。試しに釣ってみたんだ」
「そうなんだぁ、こんどおでかけするときはウルもさかなさんみてみたいなぁ」
期待に満ちた瞳で母を見るウルティナ。こんな眼差しを向けられては、期待に応えないわけにはいかない。
「じゃあウルちゃんが
本当は無条件で連れていっても構わなかったが、たまにはこういうのもいいかと、エリーシャにしては珍しく条件をつけてみた。
目的があった方がやる気も出ると践んだのだ。
「ほんとっ!? やくそくだよ!」
「もちろんだ。それよりも、魚が冷めないうちに食べてみるといい。美味しいぞ」
「うん!」
箸を拙いながらも丁寧につかい、魚を小さな口へと運び、
――――パクり。
「どうだ?」
「んん~~、おいしい! さかなさん、すごくおいしいよ!」
どうやら初めての魚はウルティナの口に合ったようで、あっという間に完食してしまった。
「それはよかった。次はウルちゃんの釣った魚を食べさせてくれ」
「うん、まかせて! えへへ、さかなつりもぴくにっくもたのしみ」
◆
――――という訳でここ数日、ウルティナはよりいっそう
そして今日、ついに
「えへへ~、あしたがたのしみ! メリィもいっしょにいこうね! ウルがつったさかなさん、たべさせてあげるからね!」
「メェ~!」
ずっと
「そうと決まれば、今日の修行は終わりにして明日の準備だ。だがその前に一旦昼食にするから、ウルちゃんとメリィは庭の畑から野菜を採ってきてくれ」
「はーい!」
「メェ!」
ウルティナは一度家の中に戻り、野菜を入れるための籠を持ってすぐに畑へと向かう。
畑があるのは庭の陽当たりのいい一画。
そこにエリーシャが育てている野菜畑がある。
一人で暮らしていた頃は小規模だったが、ウルティナと暮らすようになってから少し範囲を広げ、育てる野菜の種類も増やした。
あくまで家庭菜園の域を出ないが、母娘二人とメリィが食べていくには困らないくらいの十分な量の収穫が可能だ。
ウルティナはそこで三才の頃からお手伝いをしていたおかげか、今ではすっかり一人で野菜の世話が出来るようになっていた。
水をあげたり、葉っぱについた虫を取り除いたりと、意外と大変ではあるが、ウルティナは母の手伝いが出来るのが嬉しかったりする。
「んふぅ~、きょうもみんなぷりっぷりに、おおきくそだってるねぇ! おいしそうっ!」
「メメェ!」
瑞々しいトマトとナスを見てほっこりしながら、野菜を収穫していく。
「うふふ、やっぱりおいしい!」
カプっ、と採れたてのトマトを一口。
「はい、メリィもどうぞ。でもひとつだけね。あんまりごはんまえにたべたらママにおこられちゃうからね」
「メェ!」
大好物のトマトをメリィと一個ずつ食べたあと、今日の分の野菜を収穫して母の待つ家に戻るのだった。
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