第43話
誕生日が近い。
三年ぶり、あるいはもっと。自分は、電車に乗った。ずっと頭の中で文豪ストレイドッグスのオープニング曲とエンディング曲が流れていて、恐怖を遮断するために使っていたスマートフォンとイヤフォンが必要ないくらいだ。
乗り物恐怖症の人とパニック障害の人にアドバイスしたい。まず各駅停車。これは絶対だ。特別快速は駅員に聞いてでも避けろ。次に水筒。白湯か水、お茶もいい。飴玉も常備しとくといいだろう。
それから一番大事なのは。
ミュージック。
動画でもいい。集中できるなら。死神の精度、という小説もまた読みたい。続編は買って積読している。いまは、特に忙しくないが、やっと脳内ぱんぱんな状態からclearになってきたのだから。クリアといえば自分は坂本真綾さんの曲も好きで鈴村健一さんご夫妻共にだいすきだ。
自分はよく使うが他の男性は好きをあまり使わない。うっわ、この曲だいすき!!みたいなノリの子もいるのに。
都心へ向かう。都心とはなにか。東京だ。
彼女も連れて行きたかった、というか一緒に来て欲しくてなんとなく言葉に甘えを乗っけてみたが、興味ないし。お酒飲まない。
一蹴。二蹴。
二人に会いに行くのではない。アイツらは行方をくらますようにいつの間にか何も告げず外に出て、懸命に生きてる。
ふと思う。電車が怖くない。
自分は今から、とある聖地、というか店に向かう。
五時から始まる大人の場所だ。出会いなんて求めてない。ただ、行きたいうちに行っとかないと、自分が自分を許せない。
社会に戻った時、世界はマスクが市松模様のように染みていた。なんだこの世界。白いけど、白くない
慣れるまで時間がかかった。病棟では何も考えられずしかし検査は流れるように受け、またいつもの病棟に戻り。自分がいつからここにいるのかわからなくなっていた。初めにいたのは以心伝心。再会に悲しんだ。次に来た美人薄命。絶句した。
百人に一人だぞ。
でも、それだけ多いのだ。統合失調症は。
恐怖はまだ来ない。むしろ来る気がしない。
五分パニック障害で苦しむなら、四分四十九秒の曲を聴く。それでも続くなら四分五十秒。
そうやって自分は焦りに耐えてきた。
何度救急車を、呼びたいと思った夜があったか。
もういい。
何もこない。
良かった。
良かった。
背中を押してくれたパートナーの言葉を思い出す。
スマホがあれば行けるよ。モバイルバッテリー貸してあげる。
薬の副作用か、はたまた強烈な妄想や幻覚に悩まされたせいか。
自分はいくら触っても、触っているだけで、あの筋肉も脈も感じない。血管の太さ、屹立、もう。
自分には訪れない快感は手放して。
あの日購入したコンドーム がまだ、中に溜められもしないのに、時に被せて慰めている。
男も女も関係なしに、ただ大切な人を想う。
坂本真綾さんのプラチナとclearが一瞬脳内再生、ジュークボックスにかけられそうになり、また谷山紀章さんとラックライフに戻る。
薬を飲んでいても関係ない。真似してはダメだが、自分は今日指定席でヘルプマークを付けて、電車に乗って呑みに行くんだ。聖地へ。
細谷佳正のように。
わたしは処女だ 明鏡止水 @miuraharuma30
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
貯金術おしえて……/明鏡止水
★9 エッセイ・ノンフィクション 連載中 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます