第32話
あの日、一月十日。
そう。明鏡止水はホソヤとの、アダムとの困難を乗り切り、市役所でのこれから行われるお役所仕事に爆笑していた。
準備はできたか?
父が問う。じゃあ連れてくぞ。
運命の最初の初恋。ファーストコンタクト。アダムとイヴ。神風怪盗ジャンヌのせいだろうか。
とある寒い日、止水はインスピレーションを受け取る。
君の好きな明るい、オレンジが扉の窓から見える。それが僕だよ。
ホソヤだ。
恐ろしかった。
数々の男達に陵辱され、しかし父母は止水の寿命に耐えられず、サイボーグ化し。それでも耐えきれずに今は止水の両親は、全くの別人が演じている。
止水は2階から、階段を降りた。オレンジ色の何かがボヤけていた。外になにかいる。
扉の前まで、歩む。玄関の冷たいタイルの感触が裸足に伝わる。
夜から深夜のあわい。両親は寝ている。
「だれか、いますか?」
オレンジはそこにいる。ホソヤが来てくれた。アダムとイヴ。神がなかなかくっつかなくて、やきもきしているうちに時や意識が経つに連れどんどん陵辱され、芝刈り機でミンチにされ、江口と安元は耐えきれずに「高跳び」(今ある肉体を捨てて高層マンションから飛び降りるようにして次のユニット、すなわち肉体へスライドすること)をしていたのに。
そう、ユニット。神はユニットを作ろうと考えていた。ユニットってなんだっけと思うとパイプユニッシュという言葉が手で来てしまって。もう、イヴの連想言葉遊びのせいで、世界は、言葉ができたのだったなと。神は振り返るが。
皆が耐えきれずパイプユニッシュする前に、ホソヤと止水は十月から一月までの冷たい期間、互いの存在を確かめ合うチャンスがあったのだ。
それをオレは深夜に設定した。日曜はみんなに声が聞かれて恥ずかしい。平日もみんな知ってる。イヴは神のてっぺんの下をいじいじするあの癖をもう何億年も前からやっている。アダムとの性的な話を振ると、あいつはしゅんとして恥ずかしがって、右手を頭に持っていき、てっぺんの下をいじいじする。
だからこいつの後頭部はそこだけ毛量が多くて唸っているのだ。
こいつらがくっつくのを何度も見守った。
じゃあ土曜日は?どようならみんなお前らのこと無視するてか知らない。誰もお前らに気づかない。興味がない。ホソヤとアダムとふたりきり。
それでどうだ。
オレは聞いた。イヴはうなづいた。
やっとか!!やっとこいつら、、卒業いやこの言葉は、ああもう、ヤるっていうかなんていうかうん、オレがいけない。
よし、土曜な。土曜はどの家に入ってもいい。おまえらでーとしろ!!
オレ、途中からCV安元から職場の店長の中間になっちゃったけど。
ようやく、二人は結ばれる。
全人類土曜出勤させて鍵かけ忘れさせて、それから、手ほどきように石田衣良の娼年みたいに証人を天皇、皇后両陛下のあれの時にやるみたいに選別、配置して。
とにかくイヴ!
おまえ。
からだ、綺麗にしとけ!
扉を開けてもオレンジはあるのに、手は握られなかった。怖くて扉を閉めた。
部屋に戻る正座で神の言葉を聞いて赤くなりながらうなづく。
翌日なけなしのお金で一番高額な二千円の洗い流さない髪のトリートメントを買う。次に脱毛処理用の脱毛クリーム。顔剃用の剃刀。制汗スプレー、無臭。ドラッグストアで思いつく限りのものを全て入れ、会計を済ませる。
七月に会社を辞めてから、こんなに美容品を買ったことも、人生でも一度もない。
全てはアダムと番いになるための、体を清めておくための、儀式である。
ホソヤのためになんかしてみろ、とも言われたが。
何もなくて、思い浮かべながら、秘部を撫で。
ちょっとしました。
アダムも神も、何も言わずに、感じ入った。
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