第19話

二十八歳、七月。そして年が明け、一月の初旬まで明鏡止水は最初の妄想と幻覚と戦うことになる。

その頃にはもう、明鏡にはYouTubeがあった。そして、明鏡はいわゆる切り抜き動画というものに出会う。Abema TV の声優と夜遊びだ。

最初はアプリをインストールすることを躊躇った。ネットで痛い目を見たことはない。むしろ見たことがないからこそ人より純で、あなたこそTwitterをやるべきだと。侮蔑と助言の両方を受けていた。さまざまに変わるメガネをかけた青年の髪色。それが後にその声優自身が演じるキャラクターのイメージカラーを表していると知った時、明鏡は感動した。しかしメガネをかけているのはもう一人の出演者も同じだ。どっしりと、あるいはだらりと椅子に腰掛けているが嫌な感じはしない。むしろくつろいでくれて安心するような四十代くらいの、肌の美しい中肉中背に見えそうでいてじつはがっしり目の男性だった。カラーメガネはまだ三十代くらいの青年であり、番組のお題や便利グッズ、ゲストに悪意など少しも持たぬ好青年のように絶叫してツッコンで行く。それを四十代の料理上手の紳士が、ツッコミに現実を叫びつけ、また鉄板なツッコミへと昇華させていく。声優と夜更かしは平日ずっと決まった時間、メンバー変えて放送されていたが。明鏡は月曜日放送だけを選んで視聴した。四十代料理上手の出演している天才軍師というラジオも愛した。ラジオアプリも、恐る恐るダウンロードすることになる。

世が世ならではなく、人が人なら、明鏡はポコチャやTikTok、タップルをインストールしただろう。

しかし、オタクはどこまでいってもオタクなのだ。

そして、妄想の中、安元洋貴は神のキャラクターボイスを務め、細谷佳正は明鏡の最愛のアダムへと認識され世界は創世記を迎える。

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