第18話

当時のわたしの貯金は六十万。実家暮らし。

そして失業保険給付金を三十六万ほど得て。

百万近くになると思うだろう。

ならない。

百万自体は貯めたことがあるのだがそれは理美容の専門学校へ挑むため、そして学費として取っておいた。しかし、なりたいものとの違いに悩み必死に独学で勉強し、いざ挑んだ社会人試験、一般試験。

どちらも落ちてしまったのだ。面接では正直に自分のパニック障害、乗り物恐怖症、うつ病歴を語り、人の髪や顔剃りを丁寧にしたいのだと、訴えても。

いけなかった。受かるはずがない。極め付けは一般試験の願書だ。独学なのがいけなかった。キチンとどこの株式会社で務めたか書けば良いものを、自分はあらゆるネットの記入法を見過ぎ、「小売業 二年」というように記入した。

本気で挑んだが、本気で落ちた。

このためにもう辞めたかった職場を時短勤務にし、勉強はしっかりやったがあとは家族のいない間に「ひとりエッチしよ!」と自慰行為に耽っては惰眠を貪っていた。夜にはきちんと机に向かった。これがキチンとと、きちんとの違いだ。しかし、この行為もまた統合失調症の餌食となる。

実在の声優さんや職場の年下ちゃんたちを出すのは可哀想だが。統合失調症は寝ている間に見た夢と甘み思いたくもない妄想、あたまの裏側で繰り広げられている幻覚が、すべてを現実に思わせる。

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